法定相続分と異なる割合で負担した所得税の債務控除

こんにちは。相続サポート協会の税理士 角田壮平です。

亡くなった人に一定の収入があった場合には、亡くなった日から4ヶ月以内に所得税の確定申告をしなければなりません。これを準確定申告といいます。この準確定申告は亡くなった人の相続人が亡くなった人の代わりに行うことになります。
この準確定申告により所得税を納付した場合には、その所得税を相続財産から控除することができます。これを債務控除といいます。

今回は準確定申告に係る所得税の債務控除について解説します。

 

法定相続分で負担した場合

 

【前提条件】
被相続人 母
相続人  長男、長女
準確定申告に係る所得税 100万円
 
上記前提条件において、長男と長女が法定相続分通り、各50万円を負担して所得税を納付しました。
この場合の債務控除は、長男が50万円、長女が50万円です。
法定相続分通りに負担した場合には何も難しくなく単純に納付した金額を債務控除すればOKです。

 

法定相続分と異なる割合で負担した場合

 
上記1の前提において準確定申告に係る所得税100万円を全額長男が負担した場合には債務控除はどのように考えれば良いでしょうか?
「負担した人が債務控除するべきだから、長男のみ100万円の債務控除をして、長女は債務控除できないでしょ?」
と単純に考えて良いものなのでしょうか?

国税通則法第5条第2項に「相続人が二人以上あるときは、民法に定める法定相続分で按分して計算する」と規定されています。すなわち、遺言等で債務の負担割合が指定されていない限りは、法定相続分で負担しないといけないのです。

本来は長女が負担すべきであった50万円を長男が代わりに立て替えていると考えるか長女が長男から50万円の贈与を受けたと考えるのが法解釈的には適切です。

なお、国税通則法とか関係なく長男と長女で遺産分割協議をした結果、全額長男の負担と決めたのだから全額長男で債務控除すればいいじゃないかとの考えもありそうですが、債務は、財産とは違って遺産分割の対象とはなりません。相続放棄などがない限り、債務は相続分に応じて負担しなければならないのです。
このように、法解釈的には法定相続分と異なる割合で負担した場合にはややこしくなります。

ただし、上記はあくまであるべきの考え方となります。実際の実務で長男が100万円の債務控除をして税務当局から指摘を受けることはあまりないのではないかと思います。なお、私が担当する相続税申告では上記の通り、色々とややこしいので準確定申告の所得税は法定相続分で負担してもらうことを原則としてます。

 

税理士 角田壮平

 

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