相続税計算上、相続財産から控除できる債務の留意点
今回は、相続財産ではなく、マイナスの財産である債務についてのお話をします。
債務控除
相続税を計算するときには、
被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができます。
差し引くことができる債務は、
被相続人が死亡したときに存在する債務で確実と認められるものです。
具体的には、銀行等の金融機関からの借入金や相続開始後に支払う固定資産税等の税金や
被相続人の病院に対する医療費などがあげられます。
相続後に発生する相続財産の名義変更費用や税理士への相続税申告報酬、
遺言執行者へ支払う遺言執行報酬等は、
相続が開始してから発生するものですので税金の計算上、債務控除とはなりません。
いくつか留意すべきものについて解説していきます。
墓地、墓石等購入費用の未払金
墓地や墓石等は、相続税計算において非課税財産とされています。
そのためいずれ購入するものであるならば、生前に購入すれば相続税を節税できることから購入検討をされる方もいらっしゃいます。
(相続財産となる現金が非課税財産である墓地等に変わるため節税効果が生まれます。相続開始後に購入する場合には、相続税を支払った後の金額で墓地等を購入することになります。)
ここで留意すべき点は、
非課税財産に係る未払金は債務控除の対象とならないことです。
相続が発生しそうだといって急いで墓地等を購入したとしても、代金の支払が相続開始後であれば節税対策にはなりません。
また金の仏像等といった社会通念上著しく高額なものについては、
骨董品・投資対象として所有をしていると指摘をされれば相続税の非課税財産とは認められません。
団体信用生命保険付住宅ローン
団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りた方が死亡した場合等には、
生命保険会社が住宅ローン残高を支払ってくれるというものです。
そのため団信付住宅ローンについては、相続人が負担する必要のない債務となるため債務控除とはなりません。
なお、保険金は金融機関等に直接支払われるため、
相続財産とはなりませんので、保険金・住宅ローンは相続税の計算上財産にも債務にもならず、
その自宅のみが相続財産として課税されることになるため、ケースによっては相続税が発生することも考えられます。
保証債務
保証債務は原則、債務控除することはできません。
保証債務の履行がなされていない場合や保証債務の履行があったとしても
その後に主たる債務者に求償権の行使が可能な場合には、相続開始時には確実な債務とはいえないからです。
求償権の行使不能な状況とされる主たる債務者が弁済不能にあるかどうかの判断については、
下記裁判事例において
『破産、和議、会社更生又は強制執行等の手続開始を受け、もしくは事業閉鎖、
行方不明等により、債務超過の状態が相当期間継続しながら、他から融資を受ける見込みもなく、
再起の目途が立たない等の事情により、事実上債権の回収ができない状況にあることが客観的に認められるか否かによる』
との審判所判断がありますので参考までにご確認ください。
【国税不服審判所 平成8年12月11日裁決 裁決事例集No.52-113頁より】
http://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0504060000.html#y01
プラスの財産のみならず、マイナスの財産についても留意すべき点がありますので、
迷ったら専門家へご相談することをお勧めいたします。
税理士 小川裕司
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