平成29年度税制改正③ (納税義務の見直し) 野上
平成29年度税制改正において、相続税・贈与税の納税義務の見直しが検討されています。
海外に一時的に移住することによる相続税対策に規制が入ることとなります。
相続税・贈与税の納税義務者
相続税法において、被相続人(贈与者)と、相続人(受贈者)の国籍や住所地によって、納税義務者は主に、①「居住無制限納税義務者」②「非居住無制限納税義務者」③「制限納税義務者」に区分されます。
③「制限納税義務者」に該当した場合には、国内にある財産にのみ税金が課税されて、国外の財産は課税されません。
① 居住無制限納税義務者とは
相続や贈与等で財産を取得した時に、日本に居住している方は、「居住無制限納税義務者」となります。
居住無制限納税義務者は、取得した全ての財産について相続税や贈与税が課税されます。
② 非居住無制限納税義務者とは (改正前の取扱い)
相続や贈与等で財産を取得した時に、
・日本に居住していない日本国籍の方で、自分自身もしくは被相続人(贈与者)が過去5年以内に日本に住所を有していた場合
または、
・日本に居住していない外国籍の方で、被相続人(贈与者)が日本に居住している場合
は、「非居住無制限納税義務者」となります。
非居住無制限納税義務者も、取得した全ての財産について相続税や贈与税が課税されます。
③制限納税義務者とは (改正前の取扱い)
相続や贈与等で財産を取得した時に、
・日本に居住していない日本国籍の方で、自分自身と被相続人(贈与者)が共に5年を超えて海外に居住している場合
または、
・日本に居住していない外国籍の方で、被相続人(贈与者)も日本に居住していない場合
は、「制限納税義務者」となります。
制限納税義務者は、取得した財産のうち国内にある財産のみについて相続税や贈与税が課税されます。
今回の改正内容
非居住無制限納税義務者と制限納税義務者を分ける、海外居住の年数が、5年から10年に延長されることが検討されています。
これまでは、被相続人(贈与者)と相続人(受贈者)が共に5年間、海外に住所を移すことによって、海外財産の移転については日本の税金がかからないこととされていました。
そのため、親子で一時的に海外に移住し、さらに財産も海外に移した上で、5年経過後にその財産を子供にあげれば相続税・贈与税の節税を行うことが出来ていましたが、今回の改正により、日本での課税を逃れるためには、さらに5年、海外居住の期間を延ばす必要が生じることとなります。
なお、近年は国外財産についての調査が強化されていますので、海外に財産を隠しておけばわからない、などと安易な相続対策を行わないよう、注意が必要です。
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