「相続と循環」

 

1.資本論と循環

テレビでカール・マルクスの「資本論」の解説をやっていました。 150年前に資本主義について論じた本です。 今ではあまり読まれていないようですが、現在においても示唆に富む本だということを知りました。

マルクスは資本論で経済について論じていると思っていましたが、エコロジーや循環という考えも述べているようです。

資本家が適正な利潤で会社を経営し、労働者と利潤を分かち合えば、適正利潤→適正賃金→適正な消費→適正な生産→適正利潤という循環サイクルがうまくいきます。

しかし資本主義は利益を無限に追求するため、この循環が壊れ、格差の拡大を招くとしています。 今の日本も超富裕層がいる一方、庶民は、長時間労働、不安定雇用、低賃金などで貧しくなっていくばかりであり、格差の拡大は社会問題となっています。

自然や地球環境の視点からも、資本主義の際限のない利益追求の結果、有限である自然や地球は循環サイクルを壊されると述べています。

現時点においてその予想は的中しており、地球温暖化に代表される環境破壊は深刻です。 今や毎年のように、数十年に一度という集中豪雨が降り、スーパー台風が来襲し、氷河も解け出し、プラスティックなどによる海洋汚染が生態系に深刻な事態をもたらしています。 熱帯雨林の開発による森林破壊も深刻です。

このように資本は、人間だけでなく、自然からも豊かさを一方的に吸い尽くし、、その結果、人間と自然の物質代謝(新陳代謝、循環)に取り返しのつかない亀裂を生み出す、とマルクスは資本論の中で繰り返し警告しているようです。 現在は、その取り返しのつかない状態の直前であるといえるでしょう。

 

2.相続と循環

人間社会も循環しているといえます。 人は生まれてきて、生きて、やがて死んでいきます。 人類の歴史は、それを何世代も何世代も繰り返してきました。

仏教に「輪廻転生」という言葉があります。 命あるものが何度も転生し、生き物として生まれ変わることを言うようです。

木々の枝や落葉も、しっかり枯れて、水や太陽、土の中のバクテリアなどによって完全に分解されることで、土の栄養分となり、また木々を育てていきます。

そう考えると我々人間も、きちんと生きることは勿論の事、きちんと亡くなる事も、人間社会が循環する上でとても大事ではないかと思います。

相続の循環をうまくするには、きちんと亡くなること。 つまり、円満な相続を実現し、問題を後に残さないことです。 誰かが欲を出しすぎてこの循環を壊さないことです。

マルクスは、「人々は各々の能力に応じて(人々に)与え、必要に応じて(人々から)受け取ることができる。」と、富をシェアし循環する方法を述べています。 つまり、分かち合いや助け合いの相互扶助によって、富の持つ豊かさをシェアし、持続可能な経済社会を作ることを構想していたようです。

相続も、分かち合いの精神を忘れ、相続人がお金を追求し過ぎてしまうと、この循環が壊され、親族間に取り返しのつかない亀裂が生じることになります。

きちんと亡くなること、円満な相続を実現すること、相続の循環をうまくすることが、次の世代のためになり、次の世代に繋がると言えます。

我々相続アドバイザーは、皆さんがきちんと亡くなる事のお手伝いをする存在だと言えるかも知れません。

 

 

この記事を書いた専門家について

吉野 喜博
吉野 喜博相続アドバイザー・不動産コンサルタント
広島県広島市生まれ。
建築の計画・設計・監理、不動産の企画・開発・販売、土地の仕入れ等の業務を経験の後、相続の道へ。
所沢市にて相続勉強会&相談会を毎月開催中。各所で相続セミナーの講師、及び相続相談会の相談員を担当。

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