親から相続した自宅を売却した場合の検討

 先日ご相談いただきましたケースの一つでもっと早くにご相談いただければというものがありました。

 お父様の相続が発生した際に相続人である子ども達4人(お母様は5年前に逝去)が公平になるように、全ての財産(預金・株式、不動産等)を等分で相続した後にその不動産を売却されたとのことです。その不動産売却について税金がかかるため、所得税確定申告書の書き方についてのご相談でした。
 不動産を共有で各人1/4ずつ所有していたため、不動産売却に係る所得(利益)に対し1/4を乗じた金額を確定申告する必要がありますが、実は相続の遺産分割方法を一工夫することにより税金を抑えることができたのですが・・・

時すでに遅しでした。

 では節税という観点からはどういった点に気をつければよかったのでしょうか。

相続した不動産を売却する場合の留意点①

今回のケースでは、相続人の中に亡くなったお父様と同居をされている方がいらっしゃいました。同居していた相続人が相続した自宅を売却した場合には
(1)自宅売却の3,000万円控除
  (自宅を売却した場合に売却所得(利益)を最大3,000万円減額できる特例)

(2)10年超所有している自宅売却の軽減税率
   (お父様の所有期間も含めて10年超所有していた自宅を売却した場合に売却に係る所得
   (利益)が6,000万円以下であれば、その売却に係る所得に乗ずる税率について
   20%→14%(復興特別税を除く)に減額される特例)

これらの税金の特例を利用することができました。

そのため自宅はお父様と同居していた相続人が相続してその他の相続人は預金や株式を取得する等、遺産分割方法を工夫していれば不動産売却に係る税金を約500万円節税できた計算になります。

 

相続した不動産を売却する場合の留意点②

それ以外にも相続した不動産を売却する場合には下記のような点にも気をつける必要があります。
(1)サラリーマン以外の方が不動産を売却した場合には翌年の健康保険料が大幅に増加すること
(2)相続税を支払っている相続人が相続開始後3年10ヶ月以内に不動産を売却した場合には支払った相続税の一部を売却所得の経費に充てることができる特例があるため、売却を検討する場合には期限に注意すること
(3)相続によりお父様と同居していた相続人が自宅を相続した場合には、相続税計算上の自宅土地評価が8割減となる特例があるが、この特例を利用しようとする子等が相続開始後10ヶ月以内に自宅を売却した場合には特例が利用できなくなること(配偶者が自宅を相続する場合には相続後即時売却しても特例を利用することができます)

今回お聞きしたケースでは、売却に係る税金だけでなく、サラリーマンでない自営業の方や年金暮らしの相続人は1年分だけですが健康保険料も増額されるという結果になりそうです。

遺産分割前に専門家に相談をされていれば・・・
節税を第一とした遺産分割は揉める原因となりがちですが、お父様が残された財産を少しでも減らさない方法も検討すべきだと思います。

相続した不動産を売却する場合には遺産分割時から工夫することにより余計な支出を抑えることができますので、迷ったら専門家へご相談することをお勧めいたします。

税理士 小川裕司

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