所有者不明の不動産

  ここ最近新聞やテレビでもさかんに取り上げられている所有者不明の不動産問題。新たな社会問題になりつつあります。

 昨年、法務省より「不動産登記簿における相続登記未了土地調査」の結果が発表されました。10か所の地区10万筆の登記簿において、自然人名義の所有権の登記がいつされたのかを調査したものです。その結果、すでに50年以上経過している土地が大都市地域において6.6%,中小都市・中山間地域において26.6%あることが分かりました。

 なぜ所有者不明の不動産が生まれるのでしょうか?
 多くの場合、相続登記がされていないことが原因です。
 では、なぜ相続登記がされていないままとなっているのでしょうか?

1.不動産は負動産?
 地方から都市部へ生活拠点を移す人が増え、先祖代々の土地を守るという意識が薄れてきていると言われています。そうなると、先祖代々の土地は単なる「管理が大変なマイナス財産」でしかありません。マイナス財産を引受ける相続人がいなかったり、売っても値段がつかないような山林のためにお金をかけて相続登記をしたくないので、結果、相続登記は放置されてしまいます。

2.膨大な数の相続人
 「田舎の土地のことはまたいずれ考えよう」
 そう思っていても、売れない土地であれば遺産分割協議は結局放置されることがほとんどです。数十年後、ある相続人が「ここでやらないと大変なことになる」と一念発起して相続登記を司法書士に依頼したときには、すでに相続人が100人近くになっていたということは実際にあります。そうなると誰が相続人なのかを確定させることすら困難になります。

3.相続人間の交流断絶
 とくに兄弟姉妹が相続人で高齢化していると、何十年も交流がなかったりして、連絡先はおろか存否すら分からないこともあります。かつて感情のもつれがあり「一切縁を切った」という過去があると、遺産分割協議をまとめるのは大変難しくなります。放置していたら、兄弟姉妹にも相続が発生して甥姪の代になってしまったということも少なくありません。感情のもつれがある場合はお金の問題ではないので、一切関わりたくないという気持ちが強く、相続放棄してもらうことも難しくなります。

4.高額の相続登記費用
 相続登記しなければならない不動産の数が多いと、登録免許税を含めて相続登記費用もそれなりの額になってきます。売却する予定のない不動産や売却換価が難しい不動産の場合、相続人間で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書もきちんと作成したにも関わらず、相続登記費用が壁となり、結局相続登記はせずに放置されてしまうことがあります。

 相続登記がされていない背景には、このようにさまざまな事情が見え隠れしています。だからといって、絶対に解決できない問題ばかりではありません。
 「とても大変だと思っていた相続放棄手続」
 「相続人が100人くらいいると分かった時点で諦めた遺産分割」
自分たちだけではとてつもない高いハードルに思えても、専門家の助言や助力で時に解決できることもあります。
 一緒にひとつずつ紐解いていってくれる専門家に出会うことが第一歩ではないでしょうか。

司法書士 中田佐保子

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