相続手続きを円滑に進めるために(その④)

自筆証書遺言の検認手続きと遺言書の開封

公正証書遺言は遺言証書の原本が公証役場で厳重に保管されますがこれに対して、自筆証書遺言の保管は遺言者自身の負担と責任のもとで行われてきました。今回の改正により2020年7月10日から、自筆証書遺言を作成した者は、公的機関である法務局に遺言書の原本の保管を委ねることができ、保管されている自筆証書遺言については、検認の規定が適用されないこととなりました。

しかし法務局に保管されていない自筆証書遺言においては検認の手続きが必要であり検認の手続きを踏まなかった場合は過料が課せられるので注意を要します。

 

  • 検認の意義
    • 遺言には、常に偽造・変造・滅失等の危険がつきまといます。そこで民法は、遺言制度を公正に運用するために、後日の紛争に備えて、遺言書の原状を保全する手続き(証拠保全の手続き)を用意しました。それが、家庭裁判所による遺言書の検認です。

 

  • 検認は、公正証書遺言以外の遺言に要求されています。公正証書遺言について検認の手続きが不要とされているのは、偽造等の危険性が低いと考えられたことによります。

自筆証書遺言は検認制度の適用を受けるものの、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下、「遺言書保管法」と言う)の規定に基づき法務局に保管されている自筆証書遺言については、検認が不要となります。

 

  • 検認は、遺言の客観的・外形的状態に関する事実を調査し、遺言書の原状を確定する証拠保全の手続きにすぎませんが検認の手続きを踏まなかった場合は、5万円以下の過料が課せられます。

 

  • 検認手続きにおいて、家庭裁判所は、遺言の形式的要件の充足の有無その他の遺言の実体法上の効力を判断するものではありません。

検認を受けたか否かは、遺言の効力とは関係ないので検認を受けたからといって、遺言の有効性が確認されるわけではないし、遺言書が真正に成立したと推定されるわけでもないのです。

 

  • 家庭裁判所は、明白な方式違反の遺言であっても、検認の申し立てを拒むことはできません。

 

  • 検認の手続
    • 検認を申立てる

検認には申立てが必要です。この申立ては、相続開始を知った後に「遅滞なく」、相続開始地を管轄する家庭裁判所に対してすべきものとされています。

申立人となるのは遺言書の保管者であり、保管者がいない場合には相続人となります。

 

  • 家庭裁判所は、検認期日を定め、申立人、相続人その他の代理人、利害関係人に呼出状を発します。

検認の申立てがされると、家庭裁判所は、検認期日を定め、申立人、相続人その他の代理人、利害関係人に呼出状を発します。これによって、この者たちに、検認に立ち会うことで遺言の存在と内容を知る機会が与えられますが、現実に立ち会わなかったからといって、家庭裁判所は検認ができないわけではありません。

申立人、相続人、利害関係人等の立会は、検認の要件ではないのです。(検認に立ち会うことのできなかった申立人、相続人、受遺者その他利害関係人に対しては、事後的に家庭裁判所から事実調査の結果等が通知されます。)

 

  • 家庭裁判所が検認を実施する

家庭裁判所は原状を保全するために、遺言の方式に関する一切の事実を検認します。

 

  • 家庭裁判所から「検認済証明書」が発行される

家庭裁判所の書記官は、遺言書検認調書を作成し、当該遺言書を複写し、検認済みの証印を付した遺言書を申立人に返還します。

 

これまで述べたように公正証書遺言と同じように法務局に保管される自筆証書遺言については、検認の規定が適用されませんのでスムーズに遺言執行業務を進めることができ依頼者である相続人等から喜ばれますので、ぜひこの機会に活用することをお勧めします。

 

この記事を書いた専門家について

松岡和也
松岡和也行政書士
1959年神奈川県中郡大磯町生まれ。大学卒業後、岐村コンピューター会計事務所所長代理を経て独立。
遺言書の起案作成、相続財産や相続人の調査、遺産分割協議書の作成など相続に関する業務を行っています

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