預けて安心!自筆証書遺言【その5】
遺言書保管所で自筆証書遺言が保管されたならば、その後遺言者として生じる義務や保管されたからこそできることを【その5】ではまとめました。
①保管後にできること
遺言者はその遺言書を閲覧したり、その保管を撤回したりすることが可能です。また、遺言者本人ではなく、たとえばその相続人が遺言者の死後に遺言書を閲覧したり、証明書(遺言書保管事実証明書・遺言書情報証明書)の発行を受けることで、自らに関係する遺言書の有無やその内容を知ることが可能になります。
《申請の撤回》
遺言者本人は、その申請に係る遺言書が保管されている遺言書保管所の遺言書保管官に対し、いつでも遺言書の保管の申請を撤回することが可能です。保管申請の撤回をしても、遺言の効力とは関係がありません。
②保管後にしなければならないこと
遺言者は氏名や住所等に変更があったときは、その変更を遺言書保管官に届け出なければなりません。
《変更届出が必要な場合》
・遺言者の氏名、生年月日、住所及び本籍の変更
・受遺者の氏名、名称、住所の変更
・遺言者の戸籍の筆頭に記載された者の氏名
・認知するものとされた子等の氏名及び住所の変更
・遺言執行者の氏名、名称、住所の変更
③遺言書保管事実証明書とは
誰でも、遺言者の死後に、遺言書保管所における「関係遺言書(自分自身が相続人になっていたり、受遺者や遺言執行者として遺言に登場する場合などの遺言書)」の保管の有無並びに当該関係遺言書が保管されている場合には、遺言書保管ファイルに記録されている一定の事項を証明した書面「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することが可能です。この請求は全国どこの遺言書保管所でもすることが可能です。
④遺言書情報証明書とは
関係相続人等は遺言者の死後、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面「遺言書情報証明書」の交付を請求することが可能です。
遺言書情報証明書に記載されるのは、遺言書保管ファイルに記録された事項であり
1,遺言書の画像情報
2,遺言者の氏名、出生年月日、住所及び本籍
3,受遺者、遺言執行者等の氏名又は名称及び住所
などが記載されます。
つまり、遺言書保管事実証明書で遺言書の有無を確認し、遺言書情報証明書で遺言書の内容が確認できるのです。
⑤遺言書原本の閲覧請求
関係相続人等が閲覧を請求できるのは遺言者の死後であり、関係遺言書を保管する遺言書保管所の遺言書保管官に対してです。遺言書情報証明書のように、全国どこの遺言書保管所でも対応してもらえるわけではありません。
また関係相続人等は遺言書保管ファイルに記録された事項を表示したものの閲覧の請求をすることが可能ですが、この場合には全国どこの遺言書保管所の遺言書保管官に対しても請求できます。
これまで法務局での遺言書保管制度について説明してきましたが、遺言書についてあまり馴染みのなかった人でも公正証書遺言の作成と比べると気軽に廉価で初めて遺言書を書く人にもあまり抵抗なく作成できると感じられたと思います。それでも心配な方は一度専門家に相談することをお勧めします。
この記事を書いた専門家について
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1959年神奈川県中郡大磯町生まれ。大学卒業後、岐村コンピューター会計事務所所長代理を経て独立。
遺言書の起案作成、相続財産や相続人の調査、遺産分割協議書の作成など相続に関する業務を行っています
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