財産管理の方法        小野

こんにちは、司法書士の小野です!
元気なうちは何の問題もなくできていた財産管理。
年齢を重ねるとともに気力体力と共に衰えを感じ、自分の財産の管理について不安を感じる方も多くいらっしゃると思います。
今日は、財産管理についてお話したいと思います。

 

財産管理と意思能力

 

65歳以上の高齢者のうち、認知症を既に発症または今後認知症を発症する可能性のある方の割合は28%にものぼると言われています。

亡くなった後は、遺言で財産の行方を決めることができます。
問題は、本人が生きてはいるものの、認知症や重い病気にかかったとき、どうなるか、ということなのです。

例えば、80歳のAさん。身の回りのことをするのが困難になってきたので、この度、自宅を売却してそのお金で老人ホームのに入ろうと思います。
もし、今、認知症になってしまった時、どのようなことが起こるでしょうか。

不動産業者 「Aさんの意思確認ができませんと、不動産を売却することはできません。」
銀行 「Aさんの意思確認ができないと定期預金の解約はできません。」
長男 「私が代理人です。委任状もあります。」
不動産業者・銀行 「申し訳ありませんが、ご本人でないと受付られません。」
長男 「・・・」

困りました、家も売れず、預金も解約できません。
これではどうにもなりません。

このように、現状では、大きな財産を動かす時には、必ず本人の意思確認が求められ、長男といえどもAさんの代わりになることはできないのです。

 

財産管理の方法

 

では、何か対策はあるのでしょうか。
財産管理の方法を見ていきたいと思います。

法定後見制度の利用
家庭裁判所に申立を行い、成年後見人を選任してもらいます。誰が成年後見人になるかは、自分たちの意思では確定できず、身内のこともあれば、司法書士や弁護士といった専門職が選任されることも多くあります。専門職が就く場合、月2~5万円、年間で12~60万円程度の報酬が発生します。
基本的に成年後見制度では、積極的な資産の活用はできず、自宅を売却したり、賃貸に出すためには、その都度、裁判所の許可が必要になり、手続は煩雑になります。

任意後見制度の利用
Aが元気なうちに信頼のおける親族等と任意後見契約を結びます。将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ契約により、誰に、どのような支援をしてもうらうかを決めておくことができるのです。契約書は、公正証書で作成され、登記もされますので、安心です。実際に認知症になってしまった場合は、その人を代理人として銀行の手続きや病院との入院契約をすることができます。
ただし、この場合も、任意後見人は、家庭裁判所の監督下に置かれ、裁判所の選任した監督人の指示や監督に従わなければなりませんので、自由な財産処分ができるわけではありません。

民事信託の利用
Aが元気なうちに、財産を託したい(管理してほしい)人と信託契約を結ぶことにより、財産の管理を任せることができます。財産を任された人は、信託目的の範囲内であれば、好きなように財産を動かすことができます。この信託契約は、将来、Aが認知症になった後でも同じように継続し、さらには、Aが亡くなった後でも継続することが可能ですので、Aの想いを確実に子孫に伝えることができるのです。いわば遺言の役目も備えています。

 

民事信託

 
では、民事信託とはどんな制度なのでしょうか。
次回は、ここからご説明したいと思います。

 

司法書士 小野紀子

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