新しい財産管理の手法~民事信託の活用事例 ②自社株承継信託~

こんにちは、司法書士の小野です。
今回は、信託を活用した『自社株承継』についてお話しましょう。
 

 

自社株承継の問題

 
創業以来、一生懸命頑張ってきた創業者社長の父68歳。
お陰様で業績は順調です。
社長の今後の心配は、そろそろ自分も歳なので、自社株承継をどうするか、自分の気力体力能力が低下する前に考えておきたい。
しかし、事業承継においては、必死に努力をしてきた優良企業であるからこそ、株価の高さがネックとなり、贈与税の問題もあって、なかなか長男に渡すことができません。
売買も検討するものの、買取資金の手当が問題・・・。
また、経営承継円滑化法よる事業承継税制度も要件が厳しく、実際に使える率は低いのが現状のようです。
今まで、評価が高すぎで渡せなかった株式。
そんなこんなしているうちに、創業者は認知症、意思能力なしで議決権行使不可、会社がデッドロックに乗り上げるという事態になりかねません。

 

自社株を信託する

 
株式を所有権で考えることの限界がここにあります。
では、所有権を分解して考えてみましょう。

株式の所有権 → 管理処分権(議決権)+使用収益権(配当・換価価値)に分ける。

会社の「議決権」だけでも先に渡せないか。
信託なら、渡せます。議決権だけを渡せるのです。

しかも、贈与税、譲渡所得税、不要。税務コストも。
なぜなら、実体課税主義の税務の世界では、経済的価値は移転してないと判断されるからです。

ただ、ここで一つ社長さんから質問があります。
「今すぐに全ての議決権を長男に渡してしまうと、自分はなんの口出しもできなくなるのか?」
これについては、社長に『指図権』を設定することにより、信託しても社長の指示がないと議決権を行使できないことにして、制限をかけることができます。
例えば、全ての議案とまで言わなくても、重要な議案についてのみ、制限をかけることができるのです。

その結果

 
結果、信託後は、管理処分権(議決権)だけは長男へ信託で移転し、使用収益権(配当・換価価値)は社長のまま、という図式ができます。

実態上、会社経営権は長男に。父が長期入院や認知症になっても、会社経営は止まらないわけです。
信託後、社長が認知症で成年後見人がついても、信託財産である株式には手を出せないのが現状です。

信託した後すべき事は

 
さて、信託した後は、何をすべきか。
受託者である長男は、株価を下げる努力をしましょう。
生命保険等の活用、退職金支給、不良資産の処分等損失を計上、借入金で賃貸不動産の購入等。

なぜなら、父の死亡により信託を終了とした場合に、残余財産である株式の帰属権利者を長男とすれば、長男は最終的に使用収益権(財産的価値)を取得し、相続税の評価は、この受益権をみなし相続財産として評価されてしまうからです。信託期間中に株価を下げれば、相続税は少なくてすむのです。

このように中小企業の自社株承継問題においても、信託のスキームは大変有効です。
所有権ではなく、権利を分けて考えられるところが、今までには無かった発想ですね!

司法書士・家族信託専門士 小野紀子

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