法人化による相続対策(その1)
近年、不動産賃貸業を行っている個人の方が法人化により相続対策ができないか、というご相談が増えてきています。
今回から数回にわけ、不動産賃貸業の法人化によるメリットデメリットについて書きたいと思います。
法人化が注目されているわけ
近年の税制改正の方向性として、諸外国との税制との比較から、法人税は全体的に減税方向の改正が行われています。税金が高いと企業が海外に逃げて行ってしまうため、税金を下げて企業を国内に留まらせ、また海外企業を誘致しよう、ということです。
一方、所得税は平成26年に最高税率が引き上げられ、また、給与所得者の所得から控除できる給与所得控除について上限が引き下げられていることや、平成30年からは配偶者控除についても一定の所得以上の方は控除対象外とされるなど、特に富裕層・高所得者への課税強化が行われています。
もともと、一定の所得以上の方の場合には法人化をすることにより所得税の節税を図るケースが良くありましたが、近年の税制改正の影響により、そのメリットが出る所得のボーダーが下がってきており、法人化によるメリットが出やすい方が増えてきていると言えるでしょう。
また、現在は簡単な法人であれば、設立自体も比較的容易に行うことができるため、法人を作ること自体のハードルは非常に下がってきています。
法人化のメリット① ~個人と法人の税率の差~
個人にかかる所得税は超過累進税率(金額が大きくなるほど税率が上がる仕組み)が採用されており、最低5%か最高45%までの税率構造となっています。また、住民税は一律10%かかるため、合計で15%~55%の税率となっており、所得が高い方は半分以上を税金で持っていかれる計算となります。
一方、法人にかかる法人税、地方税については、中小企業の場合、所得800万円までは実効税率で20%ちょっと、800万円を超えると実効税率で30%ちょっとの税負担となっています。
単純に考えて、所得が非常に高い場合には、個人よりも法人の方が税負担が少なくなると言え、この税率の違いが、まずは個人と法人を比較した際の違いとなります。
この記事の執筆者
野上 浩二郎
神奈川県川崎市生まれ。5歳~10歳までオーストラリア・メルボルンにて過ごす。大学卒業後、相続専門の大手税理士法人での勤務、都市銀行の事業承継専門部署への出向等を経て、2012年に税理士法人アンサーズ会計事務所を設立。資産家や中小企業オーナーの多くが潜在的に抱える相続・事業承継の悩みを掘り起こし、解決するために全力を尽くしている。
・東京税理士会武蔵野支部所属(登録番号117886)
・資格の大原 実務講座 相続税法講師
書籍
・専門家のための事業承継の実務(翔泳社)
・金融マン必携!相続税実践アドバイス(東峰書房)共著・執筆責任者
・事業承継の失敗事例33(東峰書房)共著
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