知らないと損!遺言書の知識 相続基礎知識③

相続アドバイザーの守屋佳昭です。

今回は相続基礎知識の3回目として遺言書について考察します。

前回のブログで、相続財産の分け方の基準は必ずしも法定相続分で分ける必要はない、むしろ民法は相続人の意思や相続財産の種類等、相続人の個別の状況など一切を加味して自由に分けることが規定されている。そもそも法定相続分の定めは、遺言による指定がない場合に補充的に機能する規定であることを述べました。

ここに遺言を遺すことの意義がひとつあるわけです。すなわち、自分の死後、自分の意思で、財産の処分を指定できるということです。(但し、遺留分の制限を受けます。遺留分については相続基礎知識②を参照ください。)

相続基礎知識②はこちら→

https://sozokusupport.com/4111/

また、遺言で意思表示された財産の処分について相続人が異議を述べることは、なかなかエネルギーの要ることですね。すなわち、遺言は後々の遺産分割について紛争を抑制する効果もあります。

但し、遺言もオールマイティではなく、制約はあります。また注意点が2点ありますので、後述する「遺言書の限界」で確認してください。

遺言の種類

まず、遺言はどのような種類のものがあるか。ここでは遺言は大きく2種類に分けることができると押さえてください。実際には非常に特殊なケースの遺言(秘密証書遺言や特別方式による遺言)はあるのですが、非常に特殊なケースでしか使われないので、ここではいったん①自筆証書遺言 ②公正証書遺言の2種類として捉えてください。

①自筆証書遺言

文字通り、遺言者本人が自筆で全文を自書し、作成日付を書いて、署名押印するものです。ただし、財産目録は自筆で書く必要はなく、預金通帳のコピー、不動産登記簿謄本のコピーなどに署名捺印したものを代用できます。目録が複数ある場合には、各ページごとに署名押印します。

自筆証書遺言については法務局での保管制度が新設され、2020年7月10日より施行されます。この施行以前は自筆証書遺言の保管方法は各自に任されていたため、紛失、隠匿、変造などのおそれがありましたが、原本を公的な機関(法務局)が保管するのでその心配がなくなりました。施行以降は遺言者は封印しない状態で法務局に持ち込み、遺言書の要式を満たしているかどうかの外形的審査を行い、遺言書を保管します。したがって施行以前は必要だった検認という裁判所によるチェック手続きが不要となります。

②公正証書遺言

遺言者が証人二人の立ち合いの下、公証人に遺言内容を伝えて作成してもらい、公証役場で保管されるものです。公証人に対する手数料がかかりますが、法律のプロである公証人が作成し、公証役場で保管するため、遺言書の形式要件を満たしていないので無効、とか遺言書が相続人に発見されなかったなどのリスクは限りなくゼロに近いです。また検認手続きという裁判所のチェックが不要です。さらには筆記ができない人も公証人が書いてくれるので問題ありませんし、病気でも公証人が病院などに出張してきてくれます。

遺言書の限界

先述したように、遺言書はオールマイティではありません。注意点が2点あります。

①如何に遺言書で相続の指定をしても遺留分減殺請求権には勝つことはできません。たとえば長男に全財産を相続させる、としても遺言書そのものは有効ですが、他の相続人の遺留分を侵害することはできません。遺留分減殺請求権は、何者も侵すことのできない個人の固有な権利だからです。

②認知症の発症が疑われる人の遺言は、無効を主張されてしまう可能性があります。せっかく書いた遺言書でも認知症の発症が疑われる状態では残念な結果になる可能性があります。

したがって、遺す側、受ける側の相互の、双方向のコミュニケーションが必要です。決して一方通行の遺書を残すことがないようにしたいものです。

また、まだお元気なうちに書くことをお勧めします。人間は誰も致死率100%の、いわゆる「死すべき存在」です。遺言書を書くのに早すぎることはありません。また遺言書は「遺書」ではありません。何度でも書き直すことは可能です。

本稿のまとめとして

相続基礎知識 前2回で、「そもそも相続とはなにか?」「誰が相続人になるのか?」「相続の仕方とは?」「相続財産の分け方の基準」について正しい知識を身に付けていただくために縷々述べてまいりました。

その心は、相続をめぐり苦しんだり、不幸になる人を無くしたいという思いからです。そして本稿では同じ思いから遺言書という具体的方法について述べました。

普段からのコミュニケーションの大切さ

是非皆様には普段から機会あるごとに自分の価値観や信条を周りのご家族とコミュニケーションしていただきたい。そして自分の遺した足跡(財産や債務)をどのように引き継いでもらいたいかを明確にお話しをしていただきたい。そして周りの理解を得て、遺言書を書くようにしていただきたい。遺言は無味乾燥のものでなく、家族にご自分の人生のメッセージを伝えるための手紙といえます。いつか家族はそれを何度も読み返し、感謝の涙をすることもあるでしょう。

転ばぬ先の杖

私は相続は、風邪、腹痛などの病気に例えることができると思っています。まだ未病のうちにかかりつけの医者にかかること、薬をのんで安静にすること、日ごろから定期的に健康診断を受けることなどで本当の病にしない。すなわち、問題が小さいうちに片づけ、大事に至らせない。

相続も予め打てる対策は打って、あとは心安らかに過ごす。そうすればいざ、事が起こったときには余裕をもって、慌てずに対処できます。

これと反対に、家族と話しあう手間を惜しみ、ワンマンに、唯我独尊で事を進め、いざとなったら生半可で、自己中心的な知識で自分の都合や勝手な思いだけで突っ走り、いよいよとなったら即席で、ウルトラCの方法だと悪徳の業者にそそのかされ、慌てて飛びついてしまい、あげくの果ては家族を不幸の奈落に突き落とす。多かれ少なかれ、世の中で相続で家族を不幸にする人の類型はこのようなものです。

そのようなことにならないため、賢明な皆様におかれましては、まずは相続サポート協会の無料相談会をご利用いただくのも一法です。

相続サポート協会のHPはこちら→

https://sozokusupport.com/

参考文献

イラスト六法 わかりやすい相続 吉田杉明

相続・遺言のポイント55  山下 江

この記事を書いた専門家について

守屋佳昭
守屋佳昭相続アドバイザー
東京都大田区出身、大田区在住。大学卒業後、モービル石油(現JXTGエネルギー株式会社)に在籍し、主にサービスステーション開発やカードプログラムでの本社管理部門、テリトリーマネージャーとして九州、関西、名古屋、東京首都圏で小売販売担当を経験した。2018年3月に定年退職後、アパマン経営と相続に特化したコンサルタント業を開業。NPO法人相続アドバイザー協議会監事、日本相続学会認定会員

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