相続手続きを円滑に進めるために

自筆証書遺言の方式①自書能力

 

民法改正により2019113日より財産目録については手書きで作成する必要がなくなりましたが目録以外は自筆で書かなければなりません。

この場合、自筆証書遺言が有効に成立するためには、遺言者が遺言当時に「自書能力」を有していたかどうかが問題となります。

 最高裁判所の判例は?

最高裁では、次のようなケースで、「自書能力」とはどのような能力であるのかという点と、「添え手」による筆記が「自書」の要件を充たすか(どのような場合に「自書」の要件をみたしうるか)という点について、次のような判断をしています。

最判昭62(1986)・10・8民集41巻7号1471頁

 

 

1、「自書能力」とは、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力であること。

 

2、まったく目の見えない者であっても、文字を知り、かつ、自書で書くことができる場合には仮に筆記についても他人の補助を要するときでも自書能力を有する。

逆に、目の見える者であっても、文字を知らない場合には、自書能力を有しない。

 

3、そうであるとすれば、本来読み書きのできた者が、病気、事故その他の原因により視力を失いまたは手が震えるなどのために、筆記について他人の補助を要することになったとしても、特段の事情がない限り自書能力は失われない。

 

4、病気その他の理由により運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、自筆証書遺言において「自書」を要求する法の趣旨に照らすと、

(1)遺言者が証書作成時に自書能力を有し、

(2)他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みに任されており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、

(3)添え手が添え手をした他人の意思が介入した形式がないことが、筆跡のうえで判定できる場合には、「自書」の要件を充たすものとして有効であると解するのが相当である。

 

以上のことから遺言者が「自書」の要件を充たすかどうか不安な場合には公正証書遺言にするなど専門家に相談することをお勧めします。

この記事を書いた専門家について

松岡和也
松岡和也行政書士
1959年神奈川県中郡大磯町生まれ。大学卒業後、岐村コンピューター会計事務所所長代理を経て独立。
遺言書の起案作成、相続財産や相続人の調査、遺産分割協議書の作成など相続に関する業務を行っています

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