知らないとコワ~い空き家相続対策①

相続アドバイザーの守屋佳昭です。

皆さんは、お宅の周辺で明らかに人が住んでいる気配がなく、玄関先や庭先などが手入れされておらず、長い間植栽や雑草が伸び放題で周囲の閑静な住宅地の景観を壊しているような、いわゆる空き家を必ず目にしているはずです。

と断定的に申し上げますのも、日本の空き家率は13%に達しているからです。なんと7戸に1戸が空き家ですので、空き家を見かけるのはごくありきたりの風景ということになってしまっているのです。

もはやみんなの問題 空き家

総務省が発表した統計調査によれば、2018年の全国の空き家率は13.6%(空家数は846万戸)で過去最高を更新しました。船井総研の予測によれば、2023年には18%、2028年には23%、2033年には27%に達するということです。

相続などで地方の実家などを相続すると、所有者としての管理コストの重さに加え、法的なリスクの負担が重くのしかかり、近隣で空き家が荒れ果てると被害者にもなりうることになります。

もはや空き家は国民にとって他人事として避けては通れない問題になってきつつあります。

都内に住む50代の女性も中国地方に一人暮らしの80代の母親の住む実家に悩むおひとりでした。駅近の立地であるにも関わらず駅周辺にスーパーなどの商業施設もまばらで、地元の不動産業者によれば現状では何とか売却できそうだが、価格が希望するものと折り合うかは不明とのことでした。さらに老朽化した家屋では高齢の母親の体には夏の暑さ、冬の寒さが厳しいが、改修するかしないかの判断にも悩みは尽きませんでした。しかも遠隔地にあるため、頻繁に通うこともままならない状況でした。

こうした「売るに売れない」「老朽化」「遠い」の三重苦の空き家予備軍が全国に相当数あることから、相続によりそのまま空き家になってしまうことが容易に想像されます。その結果、空き家率は先ほど述べたようにこれからも高まり続けるわけです。

都市部でも例外ではない

空き家問題は地方に限りません。

都内の閑静な住宅地。周辺は真新しいマンション、賃貸アパート、一戸建てが立ち並び、ターミナル駅から徒歩圏内に立地する築20年の中古一戸建て。部屋の内部もまだきれいで、明日からでも生活できそうな物件ですぐにでも買い手が付きそうそうな家でした。

でもこの家にも買い手が付きません。

理由は土地の形状に問題があるからです。

都内には元々は矩形の土地だが、土地の一部を売却して残された土地の形状が旗竿(はたざお)のような形をしている土地が多いのです。道路への通路が細長い、いわゆる旗竿地です。建築基準法では、原則建物を建てるためには幅員4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。

この土地は旗竿地で、しかも前面道路に2m以上接していなかったのです。このため将来建物の建て替えをすることができません。

またこのような形状の土地には大型の重機が入らないことも文字通りネックになっているようです。

将来は空き家率が「4戸に1戸」へ?

前述したように船井総研の予測では2033年には空き家率を27%としています。すなわち4戸に1戸が空き家になるというわけです。

2015年に施行された空き家特別措置法は空き家の増加に歯止めをかける一定の効果があったと思います。

但し、本質的には少子化による世帯数の減少に対して短期的な効果はあるものの長期的には空き家は依然として増加するという見立てです。

空き家率30%の恐ろしさ

以前、私のブログでも申し上げたことですが、空き家率の増加には思わぬ負の副産物があるようです。治安の悪化です。

その一つの目安が空き家率30%ということです。

日本全体で空き家率が27%まで上昇するということはそれ以前に自治体単独ベースで30%を超えるところは出てくるはずです。

その時に治安が悪化しないかを十分注意しておくことが必要と考えます。

以下は、以前のブログの抜粋です。

2013年にはアメリカ中西部の都市ミシガン州デトロイトで連邦破産法に基づく破産申請となり、その後空家率が30%となりました。市の税収が減ったことにより警察、学校などの行政サービスの低下、スラム化と殺人、強盗などの犯罪が多発しました。
日本で同じような犯罪が起こるとは思えませんが、空き家率が一定水準(たとえば30%)になると自治体の財政を悪化させ、街が荒廃していくことが懸念されます。

参考ブログ:空き家、所有者不明土地問題について②

次回以降では、空き家のコスト、法的なリスクと相続パターン別の対処方法について考察いたします。

この記事を書いた専門家について

守屋佳昭
守屋佳昭相続アドバイザー
東京都大田区出身、大田区在住。大学卒業後、モービル石油(現エネオス株式会社)に在籍し、主に全国のサービスステーション開発を担当。定年退職後、アパマン経営と相続に特化したコンサルタント業を開業。NPO法人相続アドバイザー協議会監事、日本相続学会認定会員、大森青色申告会副会長  保有資格 宅地建物取引士

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