「相続分の放棄とは?」服部

以前のブログにおいて、
「相続によって引き継ぐ財産には、借金を始めとするマイナスの財産も含まれる」
ということを紹介しました。

 

今回は、
「相続時に、相続分の放棄により、思いがけずに借金などのマイナスの財産を取得してしまう」ケースを紹介します。

 

相続人が≪長男≫と≪二男≫の2名のケースで、
父(被相続人)の死後、二男は、長男から、
「自宅不動産を相続して引き続き居住していきたい。ついては、これから送る書面に署名押印して返送してほしい。返送してくれれば、後はこちらで手続を済ませておくから。」と言われておりました。

二男は、父(被相続人)の遺した目ぼしい財産は、「父が長男夫婦と一緒に暮らしていた自宅不動産くらいだろう」と考えていただけでなく、長男夫婦が父の介護をしてくれていたこともあり、長男のいうとおり、長男が自宅不動産を取得しても構わないと思っていました。

そのため、二男は、長男が自宅不動産を取得し二男は何も遺産を取得しないことを内容とする遺産分割協議書に署名押印して、長男にこれを返送し、長男は、この遺産分割協議書を利用して、自宅不動産の登記を移転しました。

 

そうしたところ、登記移転後に、二男の下に、債権者を名乗る者から、「父の借金のうち、法定相続分に相当する2分の1の金額を返済するよう求める」通知が送られてくるトラブルが生じました。

このように、遺産を取得しないとする遺産分割協議書を作成(これは相続分の放棄と呼ばれます。)したとしても、相続放棄をしなければ、相続人の地位があることに変わりはありませんので、その相続人は、プラスの財産を何も取得しないにもかかわらず、借金などのマイナスの財産を法定相続分に応じた割合で引き継いでしまう危険があります。

 

上記のような場合のように、被相続人の遺産を取得することを考えていない場合には、トラブルの発生を未然に防ぐためにも、「相続分の放棄」という形ではなく、家庭裁判所に対して「相続放棄」の手続きを直ちに取るべきといえるでしょう。

 

【執筆者】
相続サポート協会
弁護士 服部毅

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