相続と民泊2「高齢者と民泊」児山

 前回は、民泊と相続、一見無関係のようですが、相続財産の中の大きな位置を不動産が占め、その不動産の活用法として民泊が脚光を浴びつつあるので、必ずしも無関係でないという話をいたしました。今回は、相続そのものではないのですが、それと近い概念で、高齢者と民泊について触れてみたいと思います。

■ヨーロッパでは、高齢者の民泊が多い

 英語圏では、B&B(Bed&Breakfast)と呼ばれる民泊。大陸諸国では多少読み方にぶれがあるものの、おおよそペンションと呼ばれています。このペンションというのは、英語やフランス語で年金という意味だそうです。
 なぜ、年金を意味するペンションが宿の別名になったのか。それは、子どもが独立して空いた部屋に旅人を泊めることから始まったからだと言われています。その宿代が老後の暮らしの支えとなったために、年金を意味するペンションが宿の別名になったのでしょう。
 その由来からもわかるように、ヨーロッパの民泊は、高齢者が経営する物が多いと聞きます。また、日本のペンションは、そのほとんどが観光地やリゾート地にあるのに対し、ヨーロッパのペンションは市街地や住宅街にも多いそうです。

■日本でも、高齢者の民泊施設が増えている

 昨年9月民泊仲介サイト最大手のAirbnbが民泊ホストについて行った世代別調査の結果を発表しました。その中で、興味深かった事実の一つは、世代別に見るとシニア世代が一番ホストの増加率が高かったことです。

民泊ホスト数 世代別の成長率

 総数は、全国で900人余りとまだまだ少ないのですが、伸び率は一番高いということで、シニアホストは侮れません。このグラフ、一見60歳以上のホストの伸び率が23.5%増に見えますが、235%で、前年の3倍以上に増えているということなので、その活発さに驚きます。安保闘争をしたり、高度成長を支えたりした団塊世代がシニア世代の中心になってきつつあり、その世代が民泊にも目を向け始めたのかもしれません。
 Airbnbの発表によれば、男女比は女性が約4割、男性が約6割だそうです。高齢者は女性の比率が高いので、これから女性の比率が高くなってくるかもしれません。

■家計を支える手段にしているシニアホストが約3割

 また、実際にホストをしている方の36%が退職者及び無職であり、約3割が家計を支える収入源としてホストを実施しているとのことです。
近年、年金の支給年齢が引き上げられたり、支給額の減額なども検討されています。また、「老後破産」や 「下流老人」という出版物を読んでいると、現在、収入や資産がある方も何かをきっかけにして生活保護状態になってしまう状況が描かれています。
 こういう社会状況を考えると、シニア世代が今後どのように生活を成り立たせていくか、ヨーロッパ大陸における伝統的な民泊であるペンションのという言葉の元の意味をもう一度かみしめる時なのかもしれません。
 Airbnbのレポートの中で、シニア世代に詳しい村田アソシエイツ代表の村田裕之氏がシニアの民泊ホストの意義について「高齢者の三大不安は、健康不安、経済不安、孤独不安であり、ホストをすることは、この三大不安を解消し、高齢者の生活を豊かにすると考えられます。遊休資産を使うことで、年金以外の副収入が増え、経済的に余裕ができます。また、ホストとして海外からの観光客と交流することで、孤独の解消になり、健康増進につながります」と述べています。

■シニアホストの評価はゲストからも高い

 Airbnbのレポートで、さらに注目すべきなのは、シニアホストの評価がゲストからも高いことです。シニアホストの特性として、レポートは下記を挙げています。

・他の年代のホストに比べ、自宅空き部屋などの個室の提供が70%と多い
・ホスト数の比較的少ない地方都市が多い。
 第1位は和歌山県田辺市で、同市のホスト数の27%を占める
・100人以下のホストが在住する地域のシニア・ホストは39%を占める
 (18-30歳のホストが占めるのは16%)
・70%が5つ星の最高評価を獲得。(年代別の評価で第1位)
・さらにスーパーホストの割合は17%(グローバル平均7%)

 これを読むと、地方に散らばっていることがわかります。シニアホストによる民泊を振興することは、地方の創生にもつながるということでしょう。そして、地方は都会と違って、それぞれに違った表情を見せますので、旅行者も日本の深いローカルに触れ、満足度の向上につながっているのかもしれません。
先ほどの、増加率のグラフと似ていて恐縮ですが、この満足度のグラフも、なかなか興味深いものです。

民泊ホストの世代別評価
 英語も話せないあるおばあさんが自宅の一室で民泊を始め、身振り手振りでコミュニケーションを取ったり、朝食を出したり、手芸などを教えたりしたところ、外国人の間で大変人気が出て、その方のところではなかなか泊まれないという状況だったと聞きます。
 考えてみると、自分も高齢者の方と話して、自分の知らない時代の話を聞いたり、勉強になったことがありました。高齢の世代の方と若い世代の方が交流するきっかけとしても、シニアの民泊は意義があるように思います。
 私の周りにも、定年退職後民泊をしてみたいという方がいます。シニアが収入と生きがいを獲得し、若い世代との交流も進んでいくような民泊がしやすいように、法整備も進めて欲しいものです。

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