遺族厚生年金の落とし穴
遺族厚生年金には年齢要件があります
家族に先立たれた場合、残された遺族のその後の生活の支えになる公的年金に「遺族年金」があります。遺族年金には①遺族基礎年金、②遺族厚生年金とがありますが、①遺族基礎年金は、学齢期の子(原則として18歳の年度末までの子)が無い場合は支給されませんので、今日は遺族厚生年金について解説したいと思います。
遺族厚生年金を受給するための要件の一つに、年齢要件があることをご存知でしょうか。家族に先立たれた場合、無条件に遺族年金を受給できるわけではありません。次のとおり、受給する対象者によって年齢要件が課されていることはあまり知られていません。
遺族厚生年金の年齢要件
受給権者 | 年齢要件 |
妻 | 年齢要件はなく何歳であっても受給することができる |
子・孫 | 18歳年度末前にある子・孫が受給することができる(障害等級1、2級に該当する場合は20歳前) |
夫・父母・祖父母 | 被保険者の死亡時に55歳以上である年齢制限あり(受給開始年齢は60歳) |
遺族年金の場合、多くのケースでは夫に先立たれた妻が受給することが多く、妻には年齢要件が課されていないため、あまり騒がれることはないかもしれませんが、妻に先立たれた場合、夫は55歳以上でなければ遺族年金を受給することができません。更に仮に55歳以上であったとしても、夫は60歳にならないと遺族年金を受給することができないのです。
夫は仕事をしていて収入がある事が前提の制度ですが、制度設計時とは時代が違います。多様な働き方が存在する今日、性別でこのような格差な残っているのはいかがなものかと思います。
ちなみに遺族基礎年金にはこのような性別による格差はありません、早期に遺族厚生年金も格差が廃止されることを願ってやみませんが、現行制度上、妻に先立たれた夫は妻死亡時に55歳以上でなければ遺族年金は支給されません。妻が生計を維持している家庭の場合、遺族年金以外の方法で金銭補償の備えを検討する必要がありそうです。
遺族厚生年金の受給期間
▽夫の死亡時30歳以上もしくは子のある妻は一生涯
▽夫の死亡時30歳未満の妻で、子がいないときは5年間の有期
▽障害等級(1、2級)に該当しない子と孫は18歳年度末前まで
▽障害等級(1、2級)に該当する子と孫は20歳前まで
▽夫、父母、祖父母は60歳から一生涯
※再婚ほか、権利消滅の要件に該当した場合は上記の限りではありません。
遺族厚生年金は終身で受給できるものと考える方が多いと思いますが、それも誤解です。受給時の受給権者の年齢によっては、有期であることを覚えておいてください。夫に先立たれた妻が30歳未満の場合、子がいない場合は5年有期の遺族厚生年金となります。子が受給する遺族年金も、原則として子が18歳年度末までしか受給することができません。いずれも若いので、その後の収入は自助努力でという事になりますのでご注意ください。
この記事を書いた専門家について
- 大学卒業後、全国紙新聞社での約30年の勤務を経て、2019年に社労士、行政書士事務所を開設。自損交通事故で重傷を負い、懸命のリハビリでようやく社会復帰した経験があるが、復帰できたのは多くの方に支えられたからこそと感謝している。復帰後は、感謝の気持ちを社会貢献でお返ししたいと考えるようになった。特に障害者サポートに力を入れている。
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