財産管理の手法~民事信託とは~ 小野
こんにちは、司法書士の小野です。
前回の投稿(1/22)で財産管理の方法についてお話しました。
元気なうちは何の問題もなかった財産管理。年齢を重ねると共に気力体力と共に衰えを感じ、この先の自分の財産の管理について不安を感じる方も多くいらっしゃると思います。
認知症を患い意思判断能力がない、と判断された場合には、預金口座は凍結、不動産はもはや売却・建替することもできません。
そこで注目されているのが、「民事信託」です。
平成18年に改正された信託法により、新しい財産管理の手法ができるようになりました。
今までのリスクと方法
例えば、高齢化に伴い、こんな不安やリスクがあります。
☑そろそろ不動産や預金の管理を長男に任せたい。
☑かと言って、生前贈与は贈与税も高いし、この先自分の生活もあるので、全部渡してしまうわけには行かない。
☑認知症になってしまったら、預金の引き出しや不動産管理はどうするのか?
☑自分が施設に入る際には、実家を売却してその費用に充てて欲しい。
☑自宅は妻へ相続させる旨の遺言書は書いたけれど、妻が死んだら、うちには子供がいないので、自分側の兄弟に戻して欲しい。
☑自分が死んだ時、妻が認知症になっていたら、妻は財産を相続できるのか?
☑財産のほとんどが不動産だけど、子供達に争いのないよう平等に財産をあげたい。
☑相続税の納税に備えて、すぐに不動産売却ができるよう、測量や分筆といった準備を進めておきたいが、時間もかかりそうだし、億劫だ。
☑自分も高齢になってきたが、障害者の一人息子のこの先が心配だ。
今までの民法の制度では、これらを満足に解決する事ができませんでした。
従来の手法、成年後見・任意後見制度・遺言では、何らかの不都合があったのです。
民事信託を使えば、これらの不安・疑問をもっとスムーズに解決することができるのです。
民事信託でできる事
信頼できる家族に財産管理を託すことができる、それが民事信託です。
では、民事信託ではどんな事ができるのでしょう?
◆認知症・死亡対策効果
認知症になったり、万が一お亡くなりになっても、長男が今までと同じように現金を払い出しすることができる。
また、不動産を長男が今までと同じように使用し・管理し、必要があれば、処分等の資産組み換えができる。
その間に発生する収入は、今まで通り、親が使うことができる。
例えば、所有している不動産を売却して、その収入を親の入院代や介護費用に充てることができる。
◆遺産分割対策
何もしなければ、共有になってしまう不動産。分けづらい不動産を権利(=受益権)という形で分配するため、相続分の調整ができ、争いになりにくい。
信託では、認知症になる前に家族への相続配分も決められる。
◆遺言代用効果
信託契約の中で「まずは妻に、妻が死んだら、その次は弟に」といったような2世代以上に渡る指定が可能。
財産承継の順番付けを生前に決めることができる。
遺言ではできない。
◆節税効果
生前贈与や資産管理会社へ移転する場合と比べて、贈与税、取得税がかからない。
不動産登録免許税も5分の1で済む。
民事信託の仕組み
では、具体的に民事信託とはどんな仕組みなのでしょうか?
次回は、ここからお話ししたいと思います。
司法書士 小野紀子
この記事を書いた専門家について
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