「その相続対策で本当に合っていますか!?」木村

相続税改正により、平成27年1月1日以降の相続について、基礎控除額や税率等が変更されました。

 

<改正前>

基礎控除額・・・5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

<改正後>

基礎控除額・・・3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

例:法定相続人が妻と子供2人の場合の基礎控除額(亡くなった年の税法によります)

改正前→8,000万円、 改正後→4,800万円 となります。

 

その相続税改正よって、相続税を払わなければいけなくなる世帯も増えることから、最近では各種金融機関や各仕業の方々が主催する、相続に関するセミナーが至る所で開催されるようになりました。

当協会も定期的にセミナー・相談会を開催しておりますが、おかげ様で参加者様の数も回を増すごとに増え盛況をいただいており、私個人としましても年間約100件近くの相続相談の案件をいただくことから、多くの方々の相続への関心も高まって来つつあると言えるでしょう。

 

しかしながら、私は皆様の相続相談をお聞きしていると、多少危機感を覚えます。

というのも、相談者の方の多くは、セミナー等で得た、相続の表面的な部分への対処だけを考え、本当に大事な部分を見落としている方が多いのです。

 

 

~木を見て森を見ず~

 

先日ご相談にお見えになられたAさんは、渋谷駅から2~3駅離れた目黒区内の人気エリアで、駅徒歩5分弱の商業圏内に程近い一等地に、約80坪の土地と築45年の自宅建物を所有しておりました。

Aさんの自宅の周辺は、商業圏内至近の立地特性から、多くの土地が建直しされて、賃貸マンションや店舗ビル、商業ビルが建っており、Aさんの自宅はその中で取り残されたような状態でした。このエリアで、大きな敷地に古家が建つ不動産は、建築業者や不動産業者から見ると格好の営業先であり、ご多分に漏れずAさんも様々な業者から営業を受けておりました。

 

私がAさんにお会いした当初、Aさんは様々な建築業者から「相続税対策をしないと大変なことになる」と営業され、既にハウスメーカー主催のセミナーに数回参加した経験もお持ちで、節税のために所有土地に賃貸物件を建築したいと思っていました。

ハウスメーカーの「借金をして賃貸物件を建てたら節税になります」との営業トーク(決して間違いではありませんが・・・)を信じ込み、ご自身の相続対策のために賃貸物件を建てることが最善の策と決め、約2億円の建築請負契約を結ぶ直前でした。

契約前に、最後に中立的な立場の専門家の意見を聞きたいとの事で、銀行の紹介で私に相談に来られた方でした。

 

長時間に渡り相談を全てお聞きした後、以下のことが判りました。

 

・先代のご主人様が事業に失敗し借金で苦労してきたので、大きな借入はしたくない。

 ・相続税の試算をした結果、小規模宅地の特例等の不動産の評価減を駆使すると、相続税額が400万円弱となり、相続人一人当たりの相続税額は約200万円程度になること。

 

・相続人であるお子様は二人姉妹で、そのうちの次女は嫁ぎ先の実家を受け継ぐことがほぼ確定的で、Aさんの自宅不動産を相続することを望んでおらず、同居してAさんの面倒を見てくれている長女に相続させてもいいと思っている。

・Aさんを含めた家族で相続・遺産分割の話し合いをざっくばらんにできる程、良好な関係である。

 

以上のことから、概算税額を含めた相続の全体像を明確にした結果、借金をして賃貸物件を建築しなくても、Aさんの預貯金等で相続税を全て納税できることが判ったと同時に、Aさんは節税対策ではなく、相続人のお子様に公平に相続させる遺産分割対策を最優先にしなければいけないことが判明しました。(相続財産の大半の割合を自宅不動産が占めるため)

 

私は、「相続申告に長けた税理士が申告を行えば、預貯金等で払える程度で済みそうですが、それでも賃貸物件を建てられますか?」と尋ねたところ、Aさんは「預貯金等で納税できる程の相続税のために、2億円の借金をして賃貸物件は建てたくない」との結論に至り、賃貸物件を建てる相続対策を踏みとどまりました。

その後Aさんが希望された、相続人のお子様が不公平にならないための遺産分割対策案を検討し、ご自宅を約60坪と約20坪に二筆に分筆し、約60坪分を小規模宅地の特例を使える長女が自宅として相続し、約20坪分を次女が相続し売却し現金化するという案になり、Aさんの生前に分筆準備する運びとなりました。

後日ご家族全員にお集まりいただき、皆様がご納得いただいた上で遺産分割案に沿った遺言書を作成することとなりました。(対策の効果、遺言書等の内容は文字数の関係で割愛させていただきます。詳細をお聞きしたい方は、当協会担当:木村までお問い合わせください)

 

 

 

~相続の全体像を把握する~

 

上記例のように、ご相談者のAさん希望を注意深く傾聴し診断した結果、Aさんの希望に沿った相続対策は、当初Aさんが最善の策と考えていた“借金をして賃貸物件を建てること”ではありませんでした。

相続税の節税ばかりに偏って賃貸物件を建ててしまい、遺産分割対策を見落としていたら、相続時にもしかしたら、公平な遺産分割ままならず、相続人間で揉め事に発展したかもしれません。

 

私は、長く相続の現場に携わってきた中で、皆様が最善の相続迎えるために声を大にして言いたいことは、相続対策は“家族構成、相続資産内容、概算税額を含めた相続の全体像を把握する”ことが一番大事で全体像の把握がなければ、最善の対策が見えてこないということです。

表面的な部分だけに囚われ、場当たり的な対応になり相続対策を失敗しないためにも、中立的な立場の専門家に、まず全体像把握のための“相続の健康診断”を受け最適な相続対策を行ってください。

 

“木を見て森を見ず”の間違った相続対策にならないように。

相続サポート協会
執筆者 不動産コンサルタント 木村太祐

この記事を書いた専門家について

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