安易な生前贈与に注意!長生きリスクも考えて慎重に

円満相続のイメージ

相続税改正後に相続税を払うケースが増えるにつれて、相続税対策を考える人も増えています。相続税対策として生前贈与を利用するケースが増えていますが、長生きのリスクを考えると安易な生前贈与には注意が必要です。今回は、生前贈与を考えるときの注意点について紹介します。

相続税がかかってくる財産額の目安

相続が発生したときに相続税がかかるのかどうかは誰しも気になるでしょう。相続税は、亡くなった人(被相続人)が所有していた財産を対象に課税するもので、財産額や相続人の数によって相続税の税額も変わってきます。

相続税対策を考える前に、相続税がかかるだけの財産を保有しているかどうかを確認するとよいでしょう。次のような保有財産の価値を合計するとおおよその金額を出すことができます。

  1. 預貯金の残高
  2. 不動産の相続税評価額
  3. 株式など有価証券の相続税評価額
  4. 生命保険の死亡保険金額あるいは解約返戻金額
  5. マイナスの資産としてローンの残高

相続税には基礎控除額があり、基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。
相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
(養子については法定相続人に含める人数に制限があります)

実際に計算して財産の合計額が基礎控除額以下であれば相続税がかからない可能性が高いので、相続税対策のことをあまり考える必要はないでしょう。逆に超えていれば、相続税のことを考える必要があります。

生前贈与で気をつけたい贈与税

相続税がかかるぐらいの財産がある場合は、税金が減るように対策をしたいと考えるかもしれません。相続が発生したときの財産が少なければ、納める相続税も少なくなります。生きている間に財産を贈与して減らしておけば、相続税も減らせると考えても不思議ではありません。

生前贈与をする上で、気をつけたいのは贈与税です。財産を贈与すると、財産を受け取った人に対して贈与税がかかります。一般的に贈与税の税率は相続税の税率より高く、一度の多額の財産を贈与するとそれにかかる贈与税も非常に高くなります。

贈与税については毎年1月から12月までに贈与されて額に対して課税されますので、毎年計算する必要があります。また、贈与税にも基礎控除額があり年間110万円までは非課税となります。

もし、生きている間に基礎控除範囲内の金額で繰り返し贈与すれば贈与税はかかりません。相続税対策の1つとして暦年贈与といわれるものです。例えば、100万円を10年かけて贈与すれば1000万円を非課税で贈与することができ、1000万円の財産を減らすことができます。

長生きした場合に財産がいくら残るのか確認する

贈与税の基礎控除額は、相続税の基礎控除額に対して金額がとても小さいので、1年間にできる贈与の額は少ないことが多いです。生前贈与の方法では、おのずと何年もかけて長期間で取り組むことになります。

一方で自分が長生きした場合のことも考えなければなりません。

例として、財産8000万円(自宅不動産4000万円、現預金4000万円)を保有している65歳の人がいて、子どもが2人いるとします。相続税の基礎控除額は4200万円となり、財産8000万円がある現状で相続が発生すると相続税が発生してしまいます。

そこで、子ども2人それぞれに、贈与税の基礎控除の範囲内で贈与を繰り返ししました。その結果、75歳の時にはすでに2000万円の預貯金を生前贈与したことになります。

実は、老後の生活費を年金だけでカバーできるケースは少ないようです。政府の家計調査でも、年金生活をしている夫婦世帯では毎月約5万円の収支がマイナスになっています。年間60万円の貯蓄が減り、75歳の時には600万円の貯蓄が減っているとすると、この人の預貯金は1400万円になっているでしょう。

もし、この人が95歳まで長生きすると預貯金はさらに1200万円減り、残高はわずか200万円になってしまいます。長期間の入院や家の修繕などでお金がかかれば、家計はたちまち破綻してしまいます。しかし、子どもが生前贈与で受け取った1000万円は、このときすでに使われてしまいなくなっている可能性があります。

この人は長生きリスクを考えると生前贈与の額が多すぎたかもしれません。人生100年時代、もし自分が長生きをした場合に必要なお金を見積もり、その上で余裕ある財産を生前贈与にあてるのがよいのではないでしょうか。

この記事を書いた専門家について

伊達寿和
伊達寿和FP・相続アドバイザー
兵庫県西宮市出身。2017年に事務所を開業し、お客様の家計の安心と充実した暮らしをサポートすべく活躍中。相続に限らず、マネープラン、住宅ローンなどお金に関するさまざまな相談に対応している。
CFP(日本FP協会認定)、2017年日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。

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