「贈与税の非課税財産」小川
相続税の節税対策として計画的に贈与し相続財産を減らしていくことは有効です。各人年間110万円までは贈与税がかからないことは知っているが、贈与税の非課税制度はよく分からないという方は多々います。その理由の一つに租税特別措置法という特定の期間だけ適用される法律のものが多くあり、その要件が非常に詳細なためです。前回は相続税の非課税財産について簡単に解説しましたが、今回は贈与税の非課税財産について解説していこうと思います。
夫婦や親子等の扶養義務者から生活費、教育費に充てるために取得した財産で通常必要と認められるもの
扶養義務者からの生活費(通常の日常生活に必要な費用)教育費(学費や文具費等)については贈与税がかかりません。ただし生活費・教育費という名目であっても一括して贈与されたものを預金したり、実際には株式や不動産等の購入に充てられたものは贈与税がかかります。
親等から贈与を受けた住宅資金等のうち一定の要件を満たすもの
20歳以上の子、孫等が自己の居住する住宅を購入等するための資金を親等から贈与された場合には贈与税の申告をすることによりこちらの非課税制度(平成27年は最大1,500万円)を利用することができます。その住宅が50㎡以上であること等いくつもの要件を満たす必要があるため利用する際には十分な注意が必要です。
相続があった場合、その相続人等が相続開始前3年以内に贈与により取得した財産は相続税の計算に足し戻されてしまいます(生前贈与加算)が、こちらの住宅資金等で非課税とされた贈与は足し戻しの対象となりません。
親等から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすもの
30歳未満の子等が父母等から教育資金に充てるために金融機関等に信託等した場合に最大1,500万円まで非課税となるこの制度を利用することができます。
上記1.も扶養義務者からの教育資金の贈与は非課税となりますが、異なる点として一括でまとまった資金を贈与した場合に違いがでます(上記1.は贈与税がかかってしまう)。
この制度を利用した贈与については、30歳までに利用できなかった残額について贈与税がかかるため注意が必要となります。
こちらも相続開始前3年以内の生前贈与加算の対象とはなりません。
親等から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすもの
20歳以上50歳未満の子等の結婚・子育て資金に充てるためにその父母等が金融機関等に信託等した場合に最大1,000万円(結婚に関するものは300万円)まで非課税となるこの制度を利用することができます。
上記3.同様、50歳までに利用できなかった金額について贈与税がかかるため注意が必要となります。
こちらも相続開始前3年以内の生前贈与加算の対象とはなりません。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で贈与を受けた居住用不動産等のうち2,000万円までの金額
20年以上連れ添った夫婦間であれば、贈与税の申告をすることによりこちらの非課税制度を利用することができます。婚姻期間が20年かどうかの判定は入籍日から20年経過後の応当日となります。
相続にて居住用不動産を移転する場合には、不動産取得税はなく、登録免許税も売買移転等に比べ低い税率ですが、贈与により移すと不動産取得税は発生し、登録免許税も相続に比べ高い税率となるため十分な検討が必要となります。
なお、こちらも相続開始前3年以内の生前贈与加算の対象とはなりません。
平成27年から相続税は増税となりましたが、20歳以上の子・孫が親等から受ける贈与に係る贈与税は減税となりました。身近な相続税対策として贈与は有効ですが、贈与税の税率は非常に高いため移せる金額にも限界があります。上記非課税財産や他の特例等も利用しながら計画的な財産承継を上手く行うことをおすすめします。
【執筆者】
相続サポート協会
税理士 小川裕司
この記事を書いた専門家について
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