空き家のコストと法的リスクについて 知らないとコワ~い空き家相続対策②

相続アドバイザーの守屋佳昭です。

前回のこのブログでは、もはや空き家問題は国民的な課題になってきつつあり、何人も他人事では済まされなくなってきた、というお話をしました。

このブログの第2回目として今回は空き家の所有者にはどのようなコストがかるのか、所有者が負うべき空き家の法的なリスクについて考察いたします。

現状の問題点を把握して、次回のブログでお話しする空き家の対処方法も併せ事前の対策は早めに検討を開始しましょう。

またたとえ相続が開始してからでもできることはありますので、諦めずに対策をやりましょう。

たとえ少し時間がかかっても解決の道は必ずあるものです。

こんなにかかる空き家のコスト

戦後に始まったベビーブームと団塊の世代の出現は都市郊外のベッドタウンを生み出しました。あれから50年が経過し、団塊の世代も70~80代を迎え、子供たちは既に自立して都心に移り住み、かつて賑やかだったベッドタウンもシャッターを閉ざした店舗、街ゆく人も一人暮らしの老人か老夫婦が目立つ様になってしまいました。

櫛の歯が抜けるように空き家が目立つようになっています。

空き家だからお金をかけたくない、できれば放置しておきたいというのは人情です。放置してしまった結果が「空き家問題」となって社会現象化しているのが現状です。空き家は今まさにコストがかかっていますし、潜在的なコストが将来がかかってくるかもしれない「金食い虫」なのです。

固定資産税、火災保険料、解体費

マイホームをお持ちの方なら毎年6月頃に送られてくる土地と家屋に課せられる固定資産税の納税通知書をご存知のことと思います。

都心部での一般的な金額は固定資産税、都市計画税併せて毎年10~15万円程度はかかるでしょう。売れないような土地でも評価額が0円になることはなく、家屋に至っては耐用年数が過ぎていても評価が0円になることはありません。

家屋などの有形固定資産の場合、一般的な会計の考え方では耐用年数に応じて減価償却をしていき、償却後にはスクラップとして残存価値が残ることになります。しかし固定資産税の家屋の評価方法は再調達原価方式という特殊なものを採用しています。

この評価方法が厄介なのは、現にある建物を改めて調達したら幾らになるかを改めて計算し、経年劣化を考慮して評価するというものです。

減価償却によって価値が0に近づくことはなく、新築時の2割以下に下がることはないと言われています。

こんなに面倒くさいことを手間暇かけて計算しているだけでも行政の無駄というべきでしょう。

しかも固定資産税は土地、家屋を持っている限り、所有者に半永久的に課税されるものです。所有者がお亡くなりになると、相続で分割協議が調っていようといまいと相続人に納付書が回ってきます。徴税する市区町村の立場からすると財源の約半分が固定資産税になっていることから財政を維持するための重要な柱になっています。払ってくれる人は誰でもよいのです。

2015年2月に施行された「空き家対策特別措置法」で、「特定空き家」に指定され、勧告を受けると土地の固定資産税の評価額を1/6とする優遇措置「住宅用地の特例」から外され、空き家の固定資産税は大幅に増税になる可能性も出てきました。

以前に私のブログで書いた空き家、所有者不明土地の固定資産税について参考にしてください。

空き家、所有者不明土地問題について②

火災保険もコストです。火災は無論のこと、水漏れ、台風被害などに備える火災保険料も安いもので年1万円程度かかります。火災保険は昨今の台風の大型化からいって必須のアイテムとなります。台風で空き家が隣家に被害を与えてしまった場合に火災保険に入っていないと安心できません。補償の内容を再度吟味していただくことも重要です。これも建物を持っている限り半永久的に払わなければなりません。

それでは建物の解体費はいくらかかるのでしょう?木造建築だから大したことないと思われたら大間違いです。木造住宅で坪4~5万、軽量鉄骨で坪5~7万程度が相場です。木造建築であっても産業廃棄物を大量に処分しなくてはならないため40坪の木造家屋でもおよそ200万円程度はかかり、鉄骨構造と大した差はありません。

また「空き家対策特別措置法」で、「特定空き家」に指定されると市区町村が最後の手段で家屋の取り壊しを強制的に代執行できるようになりました。
これにより「行政代執行」された場合、家屋の取り壊し費用は相続人等に請求されます。

東京都大田区の賃貸アパートで代執行されたケースでは500万円の請求がありました。

マンションの管理費、修繕積立金

マンションの所有権は区分所有法という法律に基づく区分所有権です。マンションのオーナーは建物、壁、床、天井に仕切られたの専有部分を区分所有しているのと同時にエレベータ、エントランス、集会室などの共用部を共有しているという建て付けです。

この共用部分に対する管理のためマンションオーナーは日々の清掃やゴミ出しなどの管理費と将来の大規模修繕に備えて修繕積立金を供出しています。

マンションオーナーに相続が発生すると次の占有者に管理費等の支払い義務が生じますが、未納があると相続人に未納部分の負担請求が来る可能性があります。

マンションの管理組合も管理費等の未納が増えてくると清掃などのサービスに支障が出てくる可能性もあり、修繕積立も不足する事態になってしまいます。ますますマンションが荒廃してしまいますので悪循環に陥る死活問題となります。

清掃費用、雑草除去、害虫駆除などの費用

空き家の雑草や害虫駆除のため、年に一度は草取りや清掃に行く必要があるでしょう。この交通費、かかる日数、時間がコストとなります。遠隔地でいけない場合は地元のシルバーセンターや空き家管理代行サービスなどを検討する必要はあるでしょう。空き家管理代行サービスは月数千円~1万円程度で空き家の通気、通水、室内清掃などのサービスをしてくれるようです。

人の住んでいない家屋は傷みが激しいと言われます。家屋の内部やブロック塀、石垣などの様子も定期的に見ておいた方がいいでしょう。

知らなかった!ではすまされない空き家の法的リスク

放置した空き家が周囲に迷惑を与えた場合の法的リスクとは?たとえ相続放棄しても追いかけてくる管理責任とは?

民法の規定 土地の工作物の責任とは?

民法では「土地の工作物などの占有者と所有者の責任」(717条)を定めています。

土地の所有者は、その土地の上に所有している建物や塀に問題があり他人に損害を与えれば損害賠償をしなければならず、雑草や植栽が問題があり、他人に損害を与えれば同様としています。

空き家では所有者が不法行為による損害賠償をしなければならないということが起こりえます。

放火されたら?不法滞在者が住み着いたら?

空き家の管理が不備で放火や不法投棄などの犯罪の温床になったり、不法滞在者が住み着いてしまい他人に損害を与えたら「共同不法行為」として実際の加害者と同じように損害賠償を負うこともあり得ます。

昨今では民法ではさばき切れない、地域の景観、衛生、防災の観点から深刻な社会問題もあり、2015年2月に前述の「空き家対策特別措置法」が施行されました。

この法律では問題のある空き家を「特定空き家」に指定し、所有者に除却や修繕を助言、指導したり、勧告、命令したりすることができます。しかし命令に従わず、「代執行」となった場合には取り壊すなどして所有者に費用を請求することになります。

条例による法的リスクとは?

空き家が引き起こすいわゆる「外部不経済」は、上述の民法や特別措置法ではカバーしきれない問題もあります。そこで地方自治体は地域の特性や事情に応じ、条例で景観、環境、建物管理などの観点でさらに細かく定めています。

景観という観点での具体例は北海道ニセコ町の「ニセコ町景観条例」があります。観光地としての景観を損なわないように廃材や土砂、瓦礫などを除去させることができます。

同じく環境という観点では千葉県勝浦市の「勝浦市きれいで住みよい環境づくり条例」があります。地域全体の住環境の維持向上のため、廃屋や雑草を除去させることができます。

さらに建物管理という観点では東京都足立区の「足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例」があります。建物の老朽化による倒壊等の被害や不審者が侵入して放火や犯罪防止のため撤去を勧告、命令できるものです。

代執行となればその費用は所有者に請求されます。いわゆるアメとムチのムチです。

また代執行に至る前のアメとして条例によっては助成金がつくこともありますが、各条例で対応が異なるので確認が必要です。また全額を負担してくれるとは思わないほうが良いでしょう。

空き家は持っているだけでなく、潜在的なコストやリスクもついてくる厄介者なのです。また現状の民法では所有権を放棄することはできません。しかし唯一、空き家(とその土地)を捨てる方法があります。

相続の際に相続人全員が、空き家も含め相続財産の一切を相続放棄することです。空き家だけを放棄することはできません。プラスもマイナスの財産も含め、一切を放棄することです。放棄された相続財産は最終的には国庫に属することになります。(民法239条)

そのためには「相続財産管理人」を家庭裁判所に選任してもらい、一定の手続きをすることになります。この相続財産管理人が選任されるまでの間は、管理責任は相続人に残ります。この場合でも数十万円の予納金の支払いは必要です。

今回は空き家のコストとリスクのお話しでした。

次回のブログでは、空き家の対処方法について考察します。

(参考文献)

週刊エコノミスト「みんな空き家で悩んでいる」2019年7月9日号

祥伝社「空き家問題」牧野知宏

日本経済新聞出版社 「限界マンション」米山秀隆

この記事を書いた専門家について

守屋佳昭
守屋佳昭相続アドバイザー
東京都大田区出身、大田区在住。大学卒業後、モービル石油(現JXTGエネルギー株式会社)に在籍し、主にサービスステーション開発やカードプログラムでの本社管理部門、テリトリーマネージャーとして九州、関西、名古屋、東京首都圏で小売販売担当を経験した。2018年3月に定年退職後、アパマン経営と相続に特化したコンサルタント業を開業。NPO法人相続アドバイザー協議会監事、日本相続学会認定会員

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