アパート経営による相続対策の危険性 木村
こんにちは、不動産コンサルタントの木村です。
仕事柄、相続対策に特化した不動産業に携わっていると、郊外や地方都市に畑や駐車場といった、あまり稼働していない未利用土地を所有する地主さんと呼ばれるような方から相談を受けるケースがかなりあります。
その相談者の方々の多くが、現金資産はあまり蓄えがないけれども所有土地が広大なため、相続税の課税対象者となる可能性が高く、金融機関やハウスメーカー、アパート建設業者から「このままだと相続税対策が必要だから融資するので賃貸アパート建てましょう」という営業をうけており、アパート経営をするべきか迷っている、もしくは、過去に営業をうけて実際にアパートを建設し、既に賃貸経営をしているという方が大半です。
確かに、土地を持たれて相続税の課税対象になる方々には、金融機関から借金をして未利用土地にアパートを建てその物件を賃貸すると、かなりの相続税評価が下げられ相続税の節税につながる事は事実です。
しかし、未利用土地に賃貸アパートを建設することは、場所によっては相続対策が失敗に終わる危険性があります。(借金して賃貸アパートを建てた場合、駐車場等の更地のまま何もしない場合に比べ、資産評価が半分以下に圧縮でき相続税課税対象ではなくなるケースもありますが、今回は節税額がメインの話ではないため、節税効果の詳細は割愛し、別の機会のコラムでお話致します。)
以前、某金融機関の紹介で相談を受けた方に、東京都の西部多摩地区の私鉄沿線郊外駅から徒歩20分以上かかる場所に所有する土地に、15~6年前に有効活用・相続対策でアパートを建てたという方がおりました。
仮にこの方を「Aさん」とさせていただきますが、Aさんは、有効活用・相続対策になるという建設会社の営業話に乗り、すすめられるままアパートを建てたそうです。
そのアパートは、新築の当初は賃貸も埋まり賃貸経営も良かったけれど、数年後に空室が出はじめて、ピークの時には同時期に半分近くが空き部屋となることもあり、金融機関への毎月の返済ができない状況に陥り、早期改善の為に家賃を下げて空室を埋めなければいけなくなり賃貸経営に苦労した経験がトラウマとなっていて、今後多額な修繕費もかかってくるし、稼働率が悪いアパートを売却した方がいいのかどうか、相続も含めて対策を考えたいという相談でした。
物件概要を聞いてみると、近くに大学や企業といった単身者の賃貸需要が見込める機関や企業も少なく、最寄り駅からもバス便なのにもかかわらず、そのアパートは建設会社の用意した画一的な単身ワンルームプランのアパートで、ワンルームアパート経営をやるにはかなりリスクの高い立地で、相談時点でも数室の空室がある状況でした。(ただ、近年、ファミリー世帯の戸建ての開発はすすんでいて、閑静な戸建住宅街を形成しているエリアは点在している)
上記のAさんのような問題は、多くの地主さんたちが陥る可能性あることです。
では、なぜそのような問題が起きてしまうのか、留意点は以下になります。
〇Aさんはその土地の立地特性や賃貸需要のリサーチをせず、所有土地に対してどういう有効活用・相続対策が最適なのかを検証できていない。
〇建設業者は、契約を取り建てることが優先で、賃貸需要は度外視で効率・利益率重視の画一的な単身者向けアパートすすめている。
〇金融機関も貸すことが優先になり、将来の長期的な賃貸事業性まで見据えたジャッジができてない。
空室が少なく安定した賃貸経営をしていくためには、Aさんは建築計画段階で、その立地特性と賃貸需要をリサーチしたり、自分ではリサーチできないにしても建設業者から参考データなどを提示されていれば、もしかしたらファミリー世帯向けの間取りの建物を建築したほうが立地に適していると判断したかもしれないし、そもそも当該所有地でアパートを建て賃貸経営をやらずに、賃貸アパート経営とは違う相続対策の手段を選択したかもしれません。
ここ最近、様々なメディアでも不動産・建設業界が活況という報道を目にすることが増えてきました。その中でも賃貸アパート・賃貸マンション建設のラッシュについて取り上げる記事も数多く見受けられます。
日銀によると2016年の全国の不動産融資は前年から15%増の12兆2806億円で統計のある1977年以降で最高でバブル期も上回り、アパートローンも同21%増の3兆7860億円と09年の統計開始以来、最高に達し、貸家の新設着工件数も41万8543件と8年ぶり高水準だそうです。
その背景としてあるのが相続対策のアパート建設で、人口減少の高齢化社会と逆行して貸家が増えています。地方都市で周りが田んぼや畑ばかりの農地の一画にポツンとアパートが建っていたりする箇所なども目にすることもしばしばあり、そういう光景を目にすると、仕事柄本当に有効な相続対策になっているのか心配になります。
地主さんや未利用土地をご所有の方々は、先ずは安易にアパートを建築する前にその土地の立地特性や賃貸需要等全体のバランスを考えて対策をアドバイスできる専門家までご相談ください。
※参考までに、Aさんにはこの稼働率の安定しないアパートを、戸建て開発会社へ戸建て分譲用地として売却し(戸建て開発が活発で高値で売却可能だった)、都心部の賃貸需要が高い地域の一棟賃貸マンションに買い換えること(資産組み換え)を提案し、のちに23区内の一棟賃貸マンションを所有することとなり、収益性・稼働率の安定した物件を保有しながらの相続対策を実現しております。詳細をお聞きしたい方は木村まで個別にご相談ください。
この記事を書いた専門家について
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