空き家の対処方法 知らないとコワ~い空き家相続対策③

相続アドバイザーの守屋佳昭です。

全3回にわたって空き家問題を考察してまいりましたが、今年に入って新たなコロナ禍という問題が沸き起こってきました。

知らないとコワ~い空き家相続対策①

空き家のコストと法的リスクについて 知らないとコワ~い空き家相続対策②

そこで最終回の今回は相続のパターン別の空き家対処方法とともにアフターコロナの空き家対策についてお話を致します。

お時間のない方は最後の「本稿のまとめ」だけでもお読みください。

相続パターン別の空き家対処方法

空き家を相続した場合にはどのように対処したらよいでしょうか?賃貸などの利活用や売却を視野に置いておくことなど空き家の対処方法を紹介します。また空き家を捨てる唯一の手段とは?

空き家が利活用できず、売却する当てがなくてもコストはかかるし、リスクもあります。面倒だから放っておくと空き家は親から子へ、子から孫へと相続で永久に引き継がれていきます。コストやリスクも同じようについてきてしまいます。

いずれにしてもできるだけ早く、事前に検討・対処することが肝心です。事後でもできることはありますので、専門家に相談して早めに検討に着手しましょう。

また相続発生後の遺産分割協議でも空き家のコストや法的なリスクを含めて話し合いが必要であると思います。

相続した空き家を相続登記するために便利な法定相続情報証明制度ができました。将来、相続した不動産は登記を義務付けられる可能性はあります。

また相続税の申告、相続した銀行預金の名義変更や生命保険金の請求にも使えます。この制度を紹介したブログを参照してください。

相続が開始したら、まずは法定相続情報証明制度を検討しよう!

実家を相続した場合

実家には愛着はあるがあえて相続で空き家をほしい子供がいない場合や遺言がない場合には、民法の規定で兄弟間で共有になってしまいます。

兄弟間の共有は避けるのが賢明です。なぜなら共有では売却、賃貸などの変更行為は全員で合意、修繕などの管理行為は過半数の合意がなければできません。

遺産分割協議で空き家は単独所有とすれば、空き家を取り壊して土地を売却するか貸地とする、空き家を修繕して賃貸にするといった対処が取りやすくなります。

最近では民泊、シェアハウスなど、諦めずに不動産活用の専門家に相談すれば良いアイデアを出してくれるかもしれません。
いずれにしても関係者で話し合うことが唯一の解決手段と思います。

民法(第898条) 相続人が複数いる場合(共同相続の場合)には、遺産は相続がはじまったときから遺産分割が終わるまで、この数人の者、すなわち共同相続人の共有となる。

共有者に行方不明者がいる場合

相続が開始すると遺言がある場合を除いて、亡くなった方の財産は自動的に相続人が法定相続分に応じて共有となります。先述したように共有では売却、賃貸などの変更行為は全員で合意、修繕などの管理行為は過半数の合意がなければできません。

相続人間で遺産分割協議を行うため、相続人に行方不明者がいるときは弁護士に依頼して不在者財産管理人を選任したうえで、家庭裁判所に調停を申し立てることが有効です。

共有持ち分は他の共有者に移転する形で放棄してもらうことができます。他の共有者の同意も不要です。放棄された持ち分は他の共有者の持ち分の割合にしたがって最終的には他の共有者に帰属します。

その後は相続人間で遺産分割協議を行い、空き家を単独の所有とし、他の兄弟間との調整は金銭で行い、共有を避けるのが無難です。
もし話し合いがつかない場合、あるいは既に共有になっている場合には共有者が共有者の一人に売却して単独名義にし、隣家などに売却する、貸すなどの利活用をする、期限を決めて取り壊すなどの方針だけでも話し合いで決めておくことが肝要です。

民法(第25条)(中略)不在者がいる場合、家庭裁判所は不在者の利害関係人などの請求にもとづいて財産の管理に必要な処置をとることができる。(以下略)

民法(第251条)それぞれの共有者は、他の共有者の同意が無ければ、共有となっているものに変更を加えることはできない。

民法(第255条)共有者の一人がその持ち分を放棄したとき(中略)は、その持ち分は他の共有者のものになる。

相続した空き家を売却したい場合

親から相続した空き家を処分するなら、売れるうちに売ってしまうことを検討しましょう。
通常、土地や建物を売却した場合、譲渡益(譲渡所得)に対して長期、短期譲渡の別、その他の条件により一定の税率(10~30%)を適用した不動産譲渡税が課せられ、確定申告しなければなりません。

相続(または遺贈)で取得した空き家を処分売却する場合、上記算式の特別控除額が最高3,000万円まで特例で認められています。
更に相続時の相続税も取得費に加算することができます。

上記の譲渡所得は、以下の計算式で計算されます。
譲渡所得=譲渡価額(売った金額)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

建物の取得費は、下記の計算式で求めます。

建物の取得費=建物の取得価額-償却相当額償却相当額

また平成31年4月1日以降の譲渡については、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合、入所直前に居住の用に供していた家屋が適用対象に追加されました。ただし、相続により取得した家屋は古いものが多いので、耐震リフォームするか、取り壊して更地にするか等の一定の要件を満たすことが必要です。

但し、譲渡価額が1億円を超えないこと、売却時期が相続開始の日から3年目の年の12月31日までに売却するなどの特例適用要件があるので注意が必要です。

興味のある方は下記リンクをチェックして下さい。
いずれにしても申告に当たっては税理士などの専門家に相談しましょう。

国税庁HP 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

借地に建っている空き家の場合

一般的にいって借地権は強い権利ですので借地に建っている建物を相続しても何ら問題なく住み続けることができます。建物が空き家であれば、地主の承諾の上、借地権を第三者に売却する、底地を買い取って土地と建物を一括で第三者に売却する、借地権を地主に売却する、借地権と底地とを地主と等価交換するなどの方法があります。
いずれにしても借地権に強い不動産の専門家に相談しましょう。

また借地権については、非常に特殊な権利でページ数が足りません。次回以降のこのブログで借地権については詳しく考察してみたいと思います。

マンションの空き家の場合

先述のようにマンションは区分所有権に過ぎず、一戸建てよりも厄介です。建て替えの決議に区分所有者の五分の四、大規模修繕に四分の三の同意を要し、自由に自分の裁量で決められるのは専有部分だけで、それでもマンションの規約や使用細則により理事会や理事長の承認事項となる場合があります。

築古のマンションには管理費の未納や修繕積立金の不足があるところもあり、日常の清掃やゴミ出し、将来の修繕積立も不足しているものもありますので注意が必要です。

いずれにしても一人でできることは限られていますので、他の区分所有者との合意形成を作り上げていくプロセスが必要となります。

相続した場合には対策のアイデアを「本稿のまとめ」で後述しますので参考にしてください。

空き家を賃貸で貸したい場合

空き家を賃貸に出す場合、後述するように旧耐震基準で建てられた建物は注意が必要です。耐震基準を満たさない場合にはリフォームなどをして耐震性を満たしてから定期借家契約を検討してください。

長期入院や老人ホームに入所した場合、将来空き家に住み替えたいが諸々の事情で今すぐは無理な場合、定期借家契約を結んでおけば一定期間経過後に借り主を退去させることができます。

一定期間経過後に再契約することも可能で、賃料、敷金、更新料、保証金も通常の普通借家契約と同じようにもらえます。

ここで空き家が共有になっていると注意が必要です。なぜなら建物の賃貸借は少数の例外を除いて、共有者全員の同意が必要な変更行為に該当するからです。(賃貸借は管理行為という説もありますが、これでも過半数の同意が必要です)

ご注意点として不用意に他の共有者の同意を取り付けずに賃貸には出さないでください。後々にトラブルに発展する可能性があります。この場合には①共有状態を解消し、単独所有にする②家族信託を活用するなどが考えられます。

①については前述しました。

②の場合には共有者全員が委託者=受益者となり、誰か信用のできる家族などを受託者として、賃貸収入を受益権とする信託が考えられます。

信託契約として受益者が亡くなった時に備えて第2受益者をしておくこと、信託契約の終了時の空き家の売却等処分も受託者ができるように、また残余財産の帰属先は売却時の受益者と規定しておけばよいでしょう。

いずれにしても出口をあきらかにして、空き家が代々共有で引き継がれていくことは避けましょう。

家族信託は法律の専門家に相談してから実施してください。

空き家が既存不適格の場合

既存不適格とは、建築時には建築上の法令の規制が無かったのにその後の法改正などで現行法では不適格であるものです。
耐震基準や接道義務を満たしていないようなケースがそれです。
既存不適格の空き家は売却や利活用が難しいので、既存の建物を取り壊す前提で更地での売却を考えた方が無難と思われます。

ちなみに昭和56年(1971年)6月以降に建築申請した建物が新しい基準(新耐震基準)となりました。
それ以前に建てられた建物はいわゆる旧耐震基準などとよばれています。旧耐震基準はおおむね震度5を想定した基準で、平成7年(1995年)1月に起こった阪神淡路大震災の際に旧耐震と新耐震の建物では被害状況に大きな違いが出たといわれています。
耐震化支援事業は各自治体が行っていますので、予算の有無も併せて個別に各窓口にご確認ください。

下記は参考までに東京都品川区のHPに記載されている木造建築のものです。

品川区 耐震化支援事業

空き家を捨てる唯一の手段とは?

空き家を捨てる唯一の手段とは、ずばり「相続放棄」です。ただし、空き家だけを相続放棄することはできません。放棄は空き家を含めたすべての相続財産を放棄する必要があります。

空き家を捨てたいのであれば家庭裁判所に相続開始後3か月以内に放棄を申述することです。このときに他の相続人の承諾は不要で、単独でできます。

ただし、放棄しても空き家が他の相続人等の管理下に入るまでは、管理義務が伴います。

民法(940条)相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

本稿のまとめとして

最後に、空き家問題は日本の縮図だと考えています。

空き家の主な原因は日本の経済が人口減少局面に入ったことに起因していると考えているからです。

人口が増えているときは国内の需要が自然に増えていきます。結果、モノは作れば売れ、所得は増え、そのお金は衣食住を始め、様々な財やサービスの購買に回ります。これがさらに景気を刺激し、人々は安心して家族を増やし、都心部では空き家など出る幕はなかったのです。

2018年の日本人の既婚女性が一生のうち産む子供の一人当たり1.42人で、人口1億人を維持するためにはこの数値を3.44人にしなければならないという統計があります。(ここで誤解の無いように申し上げておきたいのは、私は日本人の既婚女性が一生のうちに3~4人の子供を産むべきだと申し上げているのではありません。日本の人口を1億人に保つためにはその数字が必要になるという統計上の数字の話をしているだけです)

いかに結婚率を高めるか、いかに子供を育てやすい環境を整えるかなども喫緊の課題になりますが、ともにいかに遠い目標であるかは感覚的にわかっていただけると思います。

これらはまずは生産性の向上がなければ達成できません。一人が生み出す付加価値を高めなければ給料も上がらないし、そもそも無い袖は振れず、今後次々と我々に襲ってくる空き家問題等、高齢社会がもたらす諸問題を解決していくための税収も得られないからです。

奇しくもアフターコロナの厳しい状況の中、日本は「生産性」という指標を求めてますます厳しい競争を戦っていかなければなりません。

ある統計では購買力調整済みの世界生産性ランキングでは日本は27位になっています。これは先進国では最下位ということです。

日本の政治や行政、司法のみならず、企業の統治機能や価値観が戦前のものにとどまっているからだと筆者は考えています。今回のコロナ騒ぎで問題になった数々の不手際はその象徴にように思われます。いまだにハンコがないと機能しない組織、縦割りの組織、出頭主義、デジタル化・IT化等テクノロジーの活用の遅れ、メリハリのない戦略による迷走等、日本は先進国といわれる国の中でも統治機能が進化しておらず、もはや効率では周回遅れの状態であることを認識すべきです。

アフターコロナの「新常態」といわれる変化を奇貨として日本の統治機能をせめて世界基準程度にはしたいものです。また「新常態」下の働き方では空き家の活用も積極的に行っていきたいものです。

テレワークが進めば、当然のことながら毎日会社に通勤する必要はありません。したがって東京でいえば大手町に1時間以内で通勤できる必要はありません。仮に週に1回、半日だけ会社に通勤するにしても神奈川県の厨子や葉山、千葉の勝浦に住むことができます。新幹線通勤ができる、たとえば新潟県の越後湯沢あたりも可能でしょう。広い間取りの空き家を借りて住み、夫婦で一部屋ずつ仕事専用の書斎兼オフィスを確保し、子供達には子供部屋を提供してあげることができるでしょう。一軒家であれば庭で家庭菜園や休日にバーベキューもできます。リゾートマンションであれば、毎日眺望や温泉を楽しむことも可能です。駐車場の確保も容易ですので、一家に2台の車も可能ですので、週末用のSUVと普段使いのハイブリッド車なども可能です。ちなみにハイブリッド車などに搭載されているリチウムイオン電池は非常時の電源になりますので、台風などで停電になっても数日は持ちこたえられます。

勤怠は会社支給の仕事用パソコンに管理させ、スケジュールはアウトルックのスケジュール機能で情報共有し、就業時間はフレックス制度でコアな時間帯だけはデスクの前にいるというルールだけ確立しておけばいいでしょう。

このようにすれば早朝に起きて家族が眠っている間に一仕事してからジョギングやサーフィンにでかけ、帰ってからシャワーを浴びて家族と朝食を一緒に摂っても朝9時には机の前につくことはできるでしょう。

また都心の住宅は空きが増えるので、託児所や保育園、医療施設や老人用の療養施設、インバウンドの民泊用に活用したらよいでしょう。

このように何もしなければただ厄介者の空き家を利活用することで日本全体の生産性に資することは可能です。

最後に非常事態宣言前の日本経済新聞に面白い記事が掲載されていました。日本のサービス業の生産性の低さは先進国の平均を下回っていて、その要因がデジタル化が進んでいないこと、というもの。以下、記事の抜粋を掲載します。

みなさんは今のままのj状態でとどまりたいですか?

それとも変化を受け入れて豊かで人間らしい生活を望みますか?

2020年3月23日 日本経済新聞                「生産性 日本は劣勢続く 先進国平均との格差広がる デジタル化遅れ影響か」日本生産性本部によると、日本の1時間あたりの労働生産性は2018年に46.8ドルだった。15年の日本の生産性はOECD平均の87%あったが、18年には83%に下がった。主要7か国(G7)では最下位に沈む。かねて要因に挙げられてきたのが、サービス業の生産性の低さだ。教育と医療・福祉を除く7業種で米国を下回った。卸小売り業や飲食・宿泊は米国の4割しかない。多くのサービスで日本は米国に比べて品質の高さに見合った価格設定ができていないという。OECDは加盟国各国でメールや表の作成、プログラムなどを職場でどれくらい使うかを指数化。日本は平均を下回り、職場でのデジタル化が遅れていると言及した。さらにIT投資の目的を見ると、日本の企業の「守りの姿勢」も浮かび上がる。電子情報技術産業協会の調査によると業務効率化やコスト削減が最多だった。製品・サービスの開発強化やビジネスモデルの変革など「攻めの投資」が目立つ米国企業とは対照的だ。最近は小売りや物流大手のがIT投資を増やしているが、発注や仕分けいった業務効率化に目が向きがちだ。(証券会社のアナリストは)「企業が積極的なIT投資を通じて市場のモデルケースとなるデータサービスを作り出し、マネタイズ(収益化)できなければ生産性は高まりにくい」と効率化の限界を指摘する。

参考文献:

週刊エコノミスト みんな空き家で悩んでいる 2019年7月9日号

宮田浩志 家族信託まるわかり読本 近代セールス社

奈良恒則他共著 相続相談標準ハンドブック 日本法令

高梨公之 口語民法 自由国民社

デービッド アトキンソン 日本人の勝算 東洋経済新報社

この記事を書いた専門家について

守屋佳昭
守屋佳昭相続アドバイザー
東京都大田区出身、大田区在住。大学卒業後、モービル石油(現JXTGエネルギー株式会社)に在籍し、主にサービスステーション開発やカードプログラムでの本社管理部門、テリトリーマネージャーとして九州、関西、名古屋、東京首都圏で小売販売担当を経験した。2018年3月に定年退職後、アパマン経営と相続に特化したコンサルタント業を開業。NPO法人相続アドバイザー協議会監事、日本相続学会認定会員

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