お嫁さんへの感謝をどういう形で残す?

民法改正による寄与分の変更について

寄与分はそもそも相続人にのみ認められた制度でしたが、今年の民法改正により寄与分の新しい制度として「特別の寄与」(民法1050条)が設けられて7月から施行されています。

これは相続人以外の親族が、被相続人に対して無償で療養看護その他労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持・増加につながった場合、相続開始後に相続人に対して寄与に応じた額の金銭の支払を請求できるとうものです。相続人そして被相続人に関わった方たちの公平性を保つ意味では必要なことと思います。

例えば、ほとんど無給で被相続人の事業を手伝っていたとか、被相続人の事業兼自宅の増改築に資金を提供したとか、病気や介護が必要な被相続人をヘルパーを雇わないでお嫁さんが介護した場合などです。

寄与分は、原則として相続人全員による遺産分割協議により決めることになります。(民法904条)。そこでまとまらない場合は、家庭裁判所に調停・審判の申し立てをして寄与分の金額を決めてもらうことになります。

例えば、あとでもめるのであれば被相続人が生前のうちに、寄与者(お嫁さん)を受取人とする生命保険に加入しておくのもいいと思います。ただし生命保険は受取人固有の財産です。寄与者が更に寄与分を主張しないように話し合いや遺言の作成も必要でしょう。

 

寄与分と特別受益

寄与分と特別受益の違いは何でしょう?一見同じようにも思えますが、「寄与分」は相続発生後で、「特別受益」は相続発生前に受け取っていたものを指します。

「特別受益」は、マイホーム資金や事業の開業資金を援助してもらったりとか、遺贈を受けたりした場合をいいます。特別受益を受けたと認めた場合、特別受益者は、自分の相続分から特別受益の価格を差し引いた金額が取り分となります。これが「特別受益の持ち戻し」です。

ところで、生命保険金と特別受益になるのでしょうか?生命保険金は受取人固有の財産なので特別受益には当たりません。しかし平成16年10月29日最高裁の判決で、「不公平が民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には同条の類推適応によりその死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となると解するのが相当である」としました。すべてが固有の財産とはならないと明確化された判例です。その判断基準は、①保険金額 ②保険金額の遺産総額に対する比率 ③被相続人との同居の有無 ④被相続人の介護等に対する高嫌悪度合いなど相続人と被相続人との関係性 ⑤各相続人の生活実態 としています。

上記を踏まえた金額で介護をしていたお嫁さんが保険金を受け取ることは特に問題ではないと思われます。保険を上手に活用して円満相続にしたいものです。

 

 

 

この記事を書いた専門家について

新井 明子
新井 明子保険・FP
兵庫県神戸市出身。
大学卒業後、国内、外資系生保勤務を経て2010年生命保険損害保険の乗合代理店、株式会社ライフ・アテンダントを設立。
個人、法人保険のコンサルティングセールスとして多くの相談業務に携わる。
女性のためのマネーセミナーや確定拠出年金セミナーにも定評がある。
2級ファイナンシャルプランナー、DCプランナー(企業年金総合プランナー)、MDRT終身会員。

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